研究課題
培養細胞を利用した研究で障害となるのは培養細胞の微生物による汚染である。とりわけマイコプラズマによる汚染は通常の抗菌薬で除去できないことなどから大きな問題となるが、我々は、抗菌薬を使用せず、光線力学療法を利用して培養細胞からマイコプラズマの除去する方法の開発に取り組んだ。まず、基礎研究においてよく用いられるヒト胎児腎細胞由来のHEK293細胞にMycoplasma salivariumを感染させた。その後、光感受性物質としてメチレンブルーを、光照射源として歯科用LED照射器の改造品を利用して光線力学療法を行うことによりこの培養細胞から除菌が可能であるか調べた。除菌の効果は、培養法ならびにLonza社の検出キットを用いて行った。種々の条件検討の結果、メチレンブルー100ng/ml以下でLED照射が60秒以下であればHEK293細胞の生存にほぼ影響を与えないが、それ以上では有害であることがわかった。さらに、あらかじめ細胞を十分にリン酸緩衝生理食塩水で洗ってから光線力学療法を行うことで、HEK293細胞に混入したM. salivariumを殺滅できることがわかった。あらかじめ細胞を洗っておかなくてはM. salivariumを完全には除去できず、洗うことにより除去できたことから、細胞の洗浄により細胞に付着しているM. salivariumの数が減少したことで効果が高まったと考えられた。これらの研究成果は国際的な学術雑誌であるPhotomedicine and Laser Surgery, 31(3), 2013に掲載された。さらに、他の種々のマイコプラズマならびに細胞に応用可能な普遍的な方法の開発を試みたが、菌種や細胞により光線力学療法に対する感受性が異なることから、それぞれに特異的な条件を見つける必要があることがわかった。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Photomedicine and Laser Surgery
巻: 31 ページ: 125-131
10.1089/pho.2012.3372