研究課題/領域番号 |
23592695
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
小代田 宗一 秋田大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (80400480)
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キーワード | 歯胚形成 / スフェロイド培養 / エナメル芽前駆細胞 / 象牙芽前駆細胞 |
研究概要 |
歯胚形成過程では、時期・部位特異的に様々な分子が発現して歯胚上皮-間葉の相互作用が起きるが、その機構に未解明な点は多い。本研究では、独自に樹立したマウス上皮由来エナメル芽前駆細胞株ALCと間葉由来象牙芽前駆細胞株OLCを用いて、歯胚形成における組織の成熟を再現しその機構を明らかにすることを目的として、「歯胚上皮―間葉細胞の空間配置」を模倣する3次元培養組織の構築を検討し、スフェロイド-コラーゲンゲル培養による歯胚組織の形成を試みた。ALCを赤色蛍光化合物で標識し、GFPを発現するOLCと蛍光顕微鏡下で区別して、細胞接着性を抑えたU底培養プレートを用いてそれぞれの細胞でスフェロイドを作製した。この2つのスフェロイドを同一ウェルに入れて培養するとスフェロイド同士が融合し、上皮-間葉系相互作用が惹起されると考えられた。培養法の検討の結果、培養組織の広範囲で2種の前駆細胞を接触させると、組織全体が著しく石灰化することを見出した。また、両前駆細胞のスフェロイドを一部分のみ接触させる培養法を検討し、組織全体で石灰化が急激に起こる事を回避しながら、歯胚発生時の上皮細胞が間葉組織に陥入する現象と類似の状態を起こすことに成功した。さらに組織中に細胞外マトリックス様構造が形成されていることを確認した。リアルタイムPCRで各種細胞分化マーカーおよび細胞分化シグナル経路の遺伝子変化について集中的に解析した結果、スフェロイド-コラーゲンゲル培養法で培養すると、組織の石灰化や骨芽細胞への分化に関与するTGFbシグナルのうちBMP経路や、TGFb経路の各遺伝子の発現が増加していることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
25年度は所属部署を異動などにより研究環境の整備が間に合わず、研究時間を確保できなかったため研究期間を1年延長した。そのため現在までの達成度は予定を1年遅れている。これまでに歯胚3次元培養のために歯胚上皮―間葉細胞の空間配置を模倣するスフェロイド-コラーゲンゲル培養法を検討した結果、培養組織の広範囲で2種の前駆細胞を接触させると、組織全体が著しく石灰化することを見出した。また、両前駆細胞のスフェロイドを一部分のみ接触させる培養法を検討し、組織全体で石灰化が急激に起こる事を回避しながら、歯胚発生時の上皮細胞が間葉組織に陥入する現象と類似の状態を起こすことに成功し、さらに組織中に細胞外マトリックス様構造を形成させることができた。リアルタイムPCRで各種細胞分化マーカーおよび細胞分化シグナル経路の遺伝子について集中的に解析した結果、上皮由来エナメル芽細胞前駆細胞(ALC)では、組織の石灰化や骨芽細胞への分化に関与するTGFbシグナルのうちBMP経路のBMP4およびsmad1/5/8の発現が増加し、TGFb, TGFbレセプターI、smad2/3の発現が増加していた。一方、間葉系由来象牙芽細胞前駆細胞ではBMP4の発現は抑えられ、BMP8aの発現が増加していた。また、TGFbシグナルの制御に関与するWntシグナル経路や種々の細胞接着分子の発現が両細胞で増加していた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き3次元培養開始から経時的に組織を回収しリアルタイムPCRアレイ法を使用して遺伝子発現解析を行ない、上皮―間葉相互作用による遺伝子発現の変化を組織の形態変化の様子と対応させて解析する。発現変化した分子に対して特異抗体を使用して抗体染色法により組織形成過程での発現部位を詳細に観察し、分化誘導が起きる細胞相互作用部位を推定し、そこから相互作用部位特異的に発現する遺伝子を微量リアルタイムPCR、および微量マイクロアレイ法により探索する。さらに、特定した遺伝子について、RNAiによる発現抑制や、発現ベクターによる強制発現を、本研究で用いている上皮・間葉両前駆細胞株に対して行ない、3次元培養において組織形成にどのような変化があるかを解析し、その分子の機能を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、所属部署異動により研究環境整備の遅れから研究時間を確保できず生じた。そのため、研究期間を1年延長し収支報告書に記載した次年度使用額を使用する。 研究期間を1年延長し実施計画に内容に沿って、3次元培養組織の染色など抗体試薬を使用した実験、特異的遺伝子発現解析実験、同遺伝子の強制発現およびRNAiによる発現抑制の実験を行なう。このための試薬物品費、共通機器使用費、また、成果発表のための学会参加の旅費などを研究費として予定する。
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