研究課題
歯胚形成過程では、歯胚上皮-間葉組織の間で時期・部位特異的に様々な分子が発現し、それにより両組織は相互に作用し合いながら段階的に成熟していく。しかし、その機構に未解明な部分は多い。本研究では、上皮―間葉組織の歯胚形成における成熟過程を、独自に樹立したマウス歯胚由来上皮系細胞株と間葉系細胞株を用いて再現しその機構を明らかにすることを目的とした。独自に樹立したマウス上皮由来エナメル芽前駆細胞株ALCと間葉由来象牙芽前駆細胞株OLCを用いて、歯胚組織中の「歯胚上皮―間葉細胞の空間配置」を模倣する3次元培養組織の構築を検討した。まず、細胞接着性を抑えたU底培養プレートを用いて2種の前駆細胞ALC(上皮)とOLC(間葉)それぞれの細胞でスフェロイドを作製した。この2つのスフェロイドを同一ウェルに入れて培養するとスフェロイド同士が密に融合することを見出したので、このような接触による上皮-間葉系相互作用の惹起の有無を検討した。種々の培養条件の検討の結果、培養組織の広範囲で2種の前駆細胞を接触させると、組織全体が著しく石灰化することを見出した。また、両前駆細胞のスフェロイドを一部分のみ接触させた場合、上皮細胞の一部が間葉組織に陥入するような現象を観察した。しかし、歯胚形成に類似するような形態的変化はそれ以上見出せていない。両細胞を高密度に接触させて構築した組織中に細胞外マトリックス様構造が形成されていることを観察した。細胞分化マーカーおよび細胞分化シグナル経路の遺伝子発現変化を解析した結果、ALC(上皮)では、組織の石灰化や骨芽細胞への分化に関与するTGFbシグナルのうちBMP4およびTGFb経路の遺伝子発現が増加し、一方、OLC(間葉)ではBMP4の発現は抑えられていた。また、両細胞でTGFbシグナルの制御に関与するWntシグナル経路や種々の細胞接着分子の発現が増加していた。
すべて 2014
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Nature Genetics
巻: 46 ページ: 722-725
10.1038/ng.2986.