研究課題/領域番号 |
23592696
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
玉村 禎宏 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 特任助教 (70431963)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | Fgf23 / Wnt / カルシウム |
研究概要 |
Fgf23は、リン代謝において中心的な役割を果たすが、その発現調節機構は、殆ど解明されていない。本研究では、血中カルシウムによるFgf23遺伝子発現機構の解明を目的とする。高カルシウム食を1か月間摂取させたマウスの大腿骨では、コントロール食摂取群と比較して約3倍のFgf23遺伝子発現の上昇が認められた。一方、Wnt/beta-cateninシグナルの標的遺伝子であるOPGやAxin2遺伝子発現は、高カルシウム食摂取群において有意に減少していた。さらに、UMR-106細胞をWnt/beta-cateninシグナルを活性化させるBIOで処理すると、Fgf23発現が抑制された。逆にWnt/beta-cateninシグナルを抑制するXAV939で処理すると、Fgf23発現の上昇が認められた。これらの結果より、血中カルシウムは、Wnt/beta-cateninシグナル活性を調節することにより、Fgf23遺伝子発現を調節すると考えられた。また、高カルシウム食摂取マウス大腿骨では、Wnt/beta-cateninシグナルの阻害因子であるDkk1の発現が上昇するデータが得られた。このことから、血中カルシウムによるFgf23発現調節は、Dkk1を介することが示唆された。これまでに、血中カルシウムとWnt/beta-cateninシグナルおよびFgf23発現の関係に注目した研究はないため、本研究結果は新たなFgf23発現調節機構の解明につながることが期待される。また、この調節機構が液性因子であるDkk1を介するものであれば、抗Dkk1抗体を用いる新たなリン代謝性疾患の治療法開発の手掛かりとなることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
TOPGALマウスがまだ未購入であるため、in vivoにおける血中カルシウム濃度の変化とWnt/beta-cateninシグナル活性の関係が不明である。また、in vitroにおけるWnt/beta-cateninシグナルのFgf23発現に対する作用は、薬を使用してWnt/beta-cateninシグナルを活性化または阻害する実験により大まかに判明した。しかし、beta-catenin分子をover-expressionもしくはKnockdownする実験により、実際にWnt/beta-cateninシグナルがFgf23発現を調節する証明がまだできていない。
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今後の研究の推進方策 |
血中カルシウムとWnt/beta-cateninシグナルとの関係は、TOPGALマウスを用いるだけでなく、beta-cateninの免疫染色による検索も行う。また、血中カルシウムとDkk1の関係を詳細に検討するために、高カルシウム摂取マウスの血清中のDkk1濃度をELIZAにより測定する。さらに、高カルシウム食摂取と同時に抗Dkk1抗体の腹腔内投与を行い、血中カルシウムのDkk1を介するFgf23発現調節を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は、まずTOPGALマウスの購入と維持に使用する。また、血中カルシウムとDkk1の関係を検討するために、Dkk1のELIZAキットやマウス腹腔内投与用の抗Dkk1抗体の購入に使用する。さらにin vitroでのbeta-catenin遺伝子修飾のための分子生物学的な試薬の購入に使用する。
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