研究課題
Fgf23は、生体のリン代謝の中心的役割を果たす因子であるが、その転写調節機構は不明な点が多い。ビタミンDシグナルは強力なFgf23発現誘導因子であり、ビタミンD受容体ノックアウトマウスにおけるFgf23発現低下は、高リン摂取では回復されないが、高カルシウム摂取で回復されることが報告されている。本研究は、血中カルシウムによるビタミンDシグナル以外のFgf23発現調節機構の解明を目的とした。我々は、高カルシウム食摂取マウスでは、脛骨でのFgf23発現上昇に伴い、Wntシグナルの標的因子であるAxin2遺伝子発現が低下することを見出した。また、内因性にFgf23を発現する細胞株UMR-106細胞において、組み換えWnt3aタンパク添加や薬剤BIO処理などによるWntシグナル亢進で、Fgf23発現が抑制されることが解った。さらに、高カルシウム食摂取マウスの脛骨では、Wntシグナル阻害因子であるDickopf1の発現が亢進することが明らかとなった。そこで、本年度はDickopf1やWntシグナルとFgf23発現調節との関係に着目した。UMR-106細胞において、Wntシグナル抑制薬剤XAV939処理や組み換えDickopf1添加により、Fgf23発現が亢進した。また、高カルシウム食摂取マウスの脛骨では、Wntシグナルの重要なmediatorであるβcateninタンパクの発現が低下していた。さらに、ELISA法により、高カルシウム食摂取マウスでは血中Dickopf1濃度が上昇することが明らかとなった。以上の結果より、血中カルシウムはDickopf1発現を介したWntシグナルの抑制によってFgf23発現を調節することが示唆された。現在骨髄腫など幾つかの腫瘍におけるDickopf1の発現上昇が報告されており、それらに対する抗Dickopf1抗体投与がマウスで実験的に行われている。本研究の結果は、抗Dickopf1抗体投与による新たなリン代謝疾患治療法の開発につながると期待される。
すべて 2013
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