研究課題
現在のところ、ゲノムに遺伝子挿入が無い「安全な」iPS細胞誘導方法として、いくつかの方法が報告されている。国内で実用化されているのは、京都大学iPS細胞研究所のエピゾーマルベクターシステムと、ディナベックと産業総合技術研究所が開発されたセンダイウイルスベクターシステムである。われわれが、岐阜大学で樹立した3種類のヒト白血球抗原(HLA)ハプロタイプホモ歯髄細胞のうち、2種類を京都大学のエピゾーマルベクターシステムで、3種類をセンダイウイルスベクターシステムを用いてiPS細胞化した。そのすべてについて、未分化マーカー発現とテラトーマ形成能を評価して、多能性を持つiPS細胞であることが確認できた。特に、日本人に最も頻度が高いHLA型をホモに持つDP74を、エピゾーマルベクターシステムによってiPS細胞化した454E2については、理化学研究所バイオリソースセンターに寄託済みであり、他の研究者へ配布も始まっている。この細胞については、われわれの手で自動培養装置を用いた大量培養実験をおこない、CGH解析と、癌関連遺伝子領域のディープシークエンシング解析によって、有害な変異が起きていないことを確認した。また、一時的な低酸素環境がiPS細胞誘導効率を上げることを論文発表し、現在センダイウイルスベクターを用いた誘導にも使えるかどうかを検証している。さらに、若年者と成人から得られた歯髄細胞間で、iPS細胞誘導効率が異なることを発見し、その原因のひとつと考えられるDLX4遺伝子について、特許申請をおこなった。本件について、MBL社に技術供与をおこない、DLX4遺伝子をセンダイウイルスベクターに組み込んだキット開発が進んでいる。
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J. Dental Res.
巻: 92 ページ: 905-910
10.1177/0022034513502204