研究課題/領域番号 |
23592699
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉田 篤 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (90201855)
|
研究分担者 |
加藤 隆史 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 講師 (50367520)
小野 高裕 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (30204241)
森谷 正之 森ノ宮医療大学, 保健医療学部, 教授 (80303981)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 脳 / 神経 / 解剖 / 歯学 / 咀嚼 / 顎 / 運動ニューロン / 抑制性ニューロン |
研究概要 |
平成23年度は、実験(1)と実験(2)の遂行を企画した。実験(1)は「大脳皮質の電気刺激で顎運動を誘発する部位の同定と運動様態を記録する」実験で、皮質の同定のため高頻度短刺激と低頻度長刺激を行った。無顆粒性島皮質内側部(Agm)のいずれの刺激でも筋活動と顎位変化のいずれも誘発されず、Agmは顎運動の少なくとも駆動への関与は低いことが示された。無顆粒性島皮質外側部(Agl)の吻外側部の高頻度短刺激では、反対側の顎二腹筋前腹から筋活動が認められた。低頻度長刺激では刺激点の38%で開口し、その18%では顎のリズミカルな運動も認められた。一次体性感覚野(S1)の吻外側部の吻高頻度短刺激では、Aglの刺激と同様に反対側の顎二腹筋前腹から筋活動が認められた。低頻度長刺激では、Agl刺激時と同様に開口が誘発され、Agl ばかりでなくS1も顎運動の駆動と制御に関与することが示された。S1の刺激点の57%でAgl刺激時に類似したリズミカルな顎運動がみられ、リズムを持った顎運動の発現とその制御には、AglよりもS1がより強く関与することが示された。以上の結果は、実験(1)に関しては、研究申請時に予想された以上の研究成果が順調に得られたことを示している。 実験(2)は「開口筋運動ニューロンを抑制する大脳皮質部位の存在を明らかにする。同時に、抑制性神経伝達物質を同定する」ことであり、単一運動ニューロン内にガラス微小電極を刺入して細胞内電位を記録するという高度な技術が必要である。実験(1)に時間を要したので実験(2)はまだ数回しか試みておらず、この技術を取得するためのトレーニングをしている状態である。24年度もこれを継続する必要がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の申請時にはモルモットを使う予定であったが、検討の結果、他の分野でもより頻繁に用いられているラットで申請内容の研究が出来るのであれば、得られる結果はより価値が高くなると判断し、実験(1)ではラットを使った。大脳皮質のうちの無顆粒性島皮質内側部(Agm)、無顆粒性島皮質外側部(Agl)、一次体性感覚野(S1)を電気刺激し、顎運動が誘発出来るか否か、出来るのであればそれぞれのどの部位の刺激が顎運動を誘発するのか、誘発される顎運動はどのような様態か、またその様態が刺激部位で異なるのか否か、異なるならばどのような差異があるのか、などの研究申請時に予定した内容が、充分に明らかに出来ている。これらの結果は、ラットを使っている多くの研究者に有益な情報となると思っている。 しかし、予想以上に実験(1)に時間を要したので、実験(2)の開始が遅れてしまっている。また、実験(2)に必要な技術の取得をしている最中で有り、申請時に予想した結果を得るには至っていない。
|
今後の研究の推進方策 |
23年度の実験では、予想以上に実験(1)に時間を要したので、実験(2)の開始が計画よりも遅れている。また、実験(2)に必要な高度な技術の取得ができていないので、24年度はまずこの技術を習得し、それが出来次第、細胞内記録を始めることになる。実験(2)の進捗状況によっては、(実験(2)は、実験(3)を実施するためのより詳細な論拠を得るためのものであり、重要ではあるが、これが終了していないと実験(3)を始められない訳ではないので)、実験(2)の完遂を待たずに実験(3)「実験(1)の回路に介在する抑制性開口筋運動前ニューロンを下位脳幹で同定する事。その神経伝達物質を同定する事」を開始することに、計画を変更することになるかもしれない。
|
次年度の研究費の使用計画 |
23年度の実験(1)の「皮質の電気刺激で顎運動を誘発させる実験」で得られた電気生理学的データは、既に所有している旧型のPowerLabを使って取り込み、その解析を行った。しかし、高い精度の解析が求められる細胞内電位のPCへの取り込みとその解析には、24年度の購入を申請しているより精度の高い新型のPowerLab4/25を使うべきである。また、24年度に購入申請している動物と薬品は、動物実験、組織切片の作成は継続されるので必ず必要である。
|