研究課題/領域番号 |
23592699
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉田 篤 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (90201855)
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研究分担者 |
加藤 隆史 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 講師 (50367520)
小野 高裕 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (30204241)
森谷 正之 森ノ宮医療大学, 保健医療学部, 教授 (80303981)
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キーワード | 脳 / 神経 / 解剖 / 歯学 / 咀嚼 / 頤 / 運動ニューロン / 抑制性ニューロン |
研究概要 |
平成24年度は、23年度の実験1(大脳皮質の電気刺激にて顎運動を誘発する部位の同定と運動様態を記録)と実験2(開口筋運動ニューロンを抑制する大脳皮質部位の存在の解明と抑制性神経伝達物質の同定)を受けて行った。23年度末の報告書に書いた様に、実験1と2の遂行は容易ではない。その理由として、抑制性の回路の機構が当初の予想よりも複雑精緻である事が考えられる。そこで24年度は、実験1、2をより広範な大脳皮質に行った。その結果(1)大脳皮質二次体性感覚野(S2)から、抑制性の運動前ニューロンが存在する三叉神経運動核周囲の網様体、小細胞性外側網様体、三叉神経感覚核への投射が有ること、(2)その投射が、23年度に明らかになった大脳皮質一次体性感覚野(S1)からの投射と比較し、多くの共通点と相違が有る事が明らかになった。この結果はHaque et al. (2012)として公表した。さらに(3)島皮質から抑制性の投射が有り、(4)その投射が、S1とS2からの投射と比較し、多くの共通点と相違が有る事が明らかになった。特に(5)島皮質からの投射が口腔顔面痛が顎運動に及す影響を抑制する事が示された。この結果はSato et al. (2013)として公表した。また(6)大脳皮質運動野の刺激では単純開閉口運動が誘発され、(7)S1の刺激では自然咀嚼様の顎運動が誘発された。これはIsogai et al. (2013)として公表した。さらに実験3(実験1の回路に介在する抑制性開口筋運動前ニューロンを下位脳幹で同定する。その神経伝達物質を同定する)を開始した。運動前ニューロンの一つである三叉神経中脳路核ニューロンの入力機構の解明を試み、(8)抑制性の伝達物質であるGABAとグリシンを持つニューロンの入力が明らかになった。この結果は、Paik et al. (2012)として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
23年度に開始した実験1と実験2が、予想以上に重要な計画であり、その遂行に時間を要しているため、本研究申請時の進捗計画に比べて確かに進捗は遅れている。24年度は、実験1と実験2の継続に加え、実験3を開始した所である。実験4(運動前ニューロンが抑制性であることを形態学的にも示す事)の着手には至っていない。しかし、実験1、2、3では、研究申請時に予想していた以上の研究成果が得られており、これまでの研究自体が非常に重要であることが再認識させられた。よって、研究全体の最終的な成果を考え、敢えて実験4を開始せずに、実験1、2、3をこのまま継続すべきと判断している所である。
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今後の研究の推進方策 |
上述したように、本研究申請時の進捗計画に比べて、確かに進捗は遅れているが、実験1、実験2、実験3が予想以上に重要な計画であり、本研究申請時に予想していた以上の研究成果が得られており、これまでの研究自体が非常に重要であることが再認識させられた。よって、研究全体の最終的な成果を考え、敢えて実験4を開始せずに、実験1、2、3をこのまま継続すべきと判断している所である。計画の最終年度にあたる25年度には、具体的には(1)実験2を更に展開し、大脳皮質の前頭前野内側部から運動前ニューロンの存在する橋延髄への投射の様態を明らかにする、(2)実験3を更に展開し、橋延髄に位置する孤束核内に存在する運動前ニューロンの入力様式を明らかにする、ことを先ず目指す。その進展次第で、実験4(運動前ニューロンが抑制性であることを形態学的にも示す事)を開始したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度は計画の最終年度であるので、本研究申請時の研究費の使用計画通り、国内外の学会での成果の公表、学術雑誌での公表に研究費を主に用いる予定である。しかし、継続中の実験のための消耗品の購入にも用いる必要があると考えられる。
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