研究課題/領域番号 |
23592703
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
岡村 裕彦 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (20380024)
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研究分担者 |
吉田 賀弥 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 講師 (60363157)
羽地 達次 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (50156379)
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キーワード | 骨芽細胞 / 破骨細胞 / 骨代謝 / プロテインホスファターゼ / PP2A / Osterix |
研究概要 |
本研究の目的は、骨芽細胞の分化と機能における蛋白質脱リン酸化酵素 (プロテインホスファターゼ) PP2A の役割を解明することである。マウス骨芽細胞 MC3T3-E1 細胞に Flag タグした PP2A を導入し、安定して PP2A が高発現する細胞株を樹立した (MC-PP2A)。MC-PP2A 細胞を骨芽細胞分化誘導培地で培養し、骨芽細胞分化・石灰化能について解析し、以下のことを明らかにした。1.MC-PP2A 細胞ではコントロールに比べて ALP 活性が低下していた。2.PP2A 阻害剤処理により、MC-PP2A 細胞の ALP 活性が回復した。3. MC-PP2A 細胞はコントロールに比べて石灰化能が低下していた。4.MC-PP2A 細胞では骨分化に関連する因子 Osterix, Runx2, Bone sialoprotein および Osteocalcin の発現が低下していた。5.MC-PP2A 細胞では Osterix プロモーター活性が低下していた。6.Osterix 強発現させた MC-PP2A 細胞では、Bone sialoprotein および Osteocalcin の発現が増加した。 前年度に樹立した PP2A 発現抑制骨芽細胞 (shPP2A) を用いて以下のことを明らかにした。1.shPP2A 細胞はコントロールの細胞に比べて、破骨細胞分化誘導に関わる因子 sRANKL/OPG 比が有意に低下していた。2.shPP2A 細胞の培養上清で処理した骨髄由来マクロファージ細胞では、RANKL により誘導される転写因子 NFATc1 の核内移行、破骨細胞マーカー因子の発現および TRAP 染色反応が抑制された。 以上の結果、PP2A は骨芽細胞の分化・石灰化能を調節するだけでなく、破骨細胞の分化を調節する重要な因子であることを報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
交付申請書に記載した本年度の目的は、骨芽細胞におけるPP2A発現が破骨細胞分化に与える影響について調べることであった。具体的には、 (1) マウス骨髄からの細胞の採取~骨髄中には骨芽細胞と破骨細胞およびそれらの前駆細胞が存在し、互いに発生・分化に影響を与えている。この機構を調べるモデルとしてPP2A発現を抑制あるいは増加した骨芽細胞の培養上清と骨髄由来の血液系幹細胞を使って破骨細胞分化に与える影響について検討する。マウス長管骨より骨髄内の細胞を採取し、浮遊細胞を回収する。細胞をM-CSF処理してディッシュに定着した細胞を実験に用いる。 (2) 破骨細胞分化マーカーの発現の検討~PP2A発現を抑制または増加した骨芽細胞から回収した培養上清を骨髄由来の細胞に作用させる。TRAP染色を用いて、破骨細胞分化に与える影響について評価する。同様に処理した血液系幹細胞からRNAを回収し、リアルタイムPCRで破骨細胞の分化マーカーであるカルシトニンレセプターやDC-STMPの発現を調べる。TRAP染色の結果と共に骨芽細胞のPP2A発現と活性が破骨細胞の分化に及ぼす影響について評価する。予想外の結果が出た場合はRANKL以外の因子や各種サイトカインによる影響についても調べて包括的に検討する ことであった。予定していた実験は全て行うことができた。研究結果を年度内に論文公表できたこと、次年度の課題である骨芽細胞のPP2Aと相互作用する因子について実験を開始していることから、「当初の計画以上に進展している。」とした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、骨芽細胞の分化と機能における蛋白質脱リン酸化酵素 (プロテインホスファターゼ) PP2Aの役割を解明することであ る。今年度の研究計画は予定通り遂行できたので、次年度の研究推進方策に主な変更点はない。具体的には、 - 骨芽細胞においてPP2Aと相互作用する因子について解析する。 Flagタグを融合したPP2A蛋白質(Flag-PP2A)を発現するレンチウイルスベクターを用いて、MC3T3-E1細胞でFlag-PP2Aを強発現させる。抽出蛋白質からFlagアフィニティゲルを用いた免疫沈降によりPP2A蛋白質と結合する因子を共沈する。SDS-PAGEにより分離し、CBB染色後バンドを切り出し、ゲル内消化を経て質量分析計を用いてアミノ酸配列を決定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は実験の無駄を予想以上に抑えられたこと、実験がスムーズに進行できたことなどから翌年度への繰り越し研究費が生じた。この費用は次年度の目的である骨芽細胞においてPP2Aと相互作用する因子について解析するための試薬購入費に充てる。この結果、より正確な解析が期待される。次年度の研究費の主な使用計画は、 1.骨芽細胞培養に必要な試薬 2.PP2Aと相互作用する因子の同定に必要なPCR関連試薬・抗体 3.研究成果の論文公表・学会発表にかかる経費 である。
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