研究課題/領域番号 |
23592707
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
松尾 拡 九州歯科大学, 歯学部, 准教授 (70238971)
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研究分担者 |
自見 英治郎 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (40276598)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | NF-kB / 口腔扁平上皮癌 / 顎骨浸潤 |
研究概要 |
口腔扁平上皮癌の顎骨浸潤は顎骨の切除を伴い、患者の予後やQOLを左右する重要な要因である。これまでの研究から癌組織では恒常的に転写因子Nuclear Factor-B(NF-B)が活性化されることが報告されている。本研究では、NF-Bの選択的阻害剤であるNBDペプチドを用いて口腔扁平上皮癌による顎骨浸潤におけるNF-Bの役割を明らかにすることを目的とした。口腔扁平上皮癌による顎骨浸潤臨床サンプル10例では正常組織と比較し、癌組織、ストローマ細胞および顎骨を吸収している破骨細胞でNF-B p65サブユニットの強い発現と核移行が見られた。マウス扁平上皮癌細胞株SCCVII細胞をNBDペプチドで前処理した後、TNFで刺激するとNF-Bの活性化が抑制された。次にSCCVII細胞をC3H/HeNマウスの下顎角部から注射し、1週間後からPBS(対照群)、野生型(WT)および変異型(MUT)NBDペプチドを週3回、3週間投与した。対照群およびMUT NBDペプチド投与群では、下顎骨および頬骨弓の著明な骨破壊が見られたが、WT NBDペプチド投与群では破壊の程度は低かった。WT NBDペプチド投与群では、対照群およびMUT NBDペプチド投与群と比較し、リン酸化p65の発現抑制と破骨細胞数の減少が認められた。また WT NBDペプチドは直接的にSCCVII細胞のアポトーシスを誘導し、またSCCVII細胞の増殖を抑制することで腫瘍体積を縮小させると考えられた。口腔扁平上皮癌による顎骨浸潤にNF-Bの活性化が重要であり、さらにNF-Bの選択的阻害剤の局所投与が重篤な副作用を引き起こす事なく、口腔扁平上皮癌細胞による顎骨浸潤を抑制する可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究目的の1つであった再現性の良い口腔扁平上皮癌による顎骨浸潤モデルを確立することができた。また、本モデルを用いて、NF-Bの選択的阻害剤であるNBDペプチドが、癌細胞のアポトーシスを誘導し、癌細胞の増殖を抑制することで腫瘍体積を縮小させることがわかった。さらに癌細胞および宿主ストローマ細胞のRANKLの発現を抑制することで、破骨細胞分化を抑制し、顎骨浸潤を抑制することを明らかにした。当初の計画より早いペースで本研究内容をInt J Cancer誌に発表できたので、「当初の計画以上に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度、NF-Bの選択的阻害剤がin vivoにおいて口腔扁平上皮癌による顎骨浸潤を抑制することを個体および細胞レベルで明らかにした。そこで、今後は数種類のヒト口腔扁平上皮癌細胞株を用いて、NF-Bの選択的阻害剤が、癌細胞のアポトーシスの誘導、増殖の抑制の分子メカニズムを明らかにする。癌細胞が周囲組織に浸潤する際には、細胞外基質の分解を伴うが、マトリクスメタロプロテアーゼの発現と活性調節におけるNF-Bの役割を検討する。さらに昨年度確立した口腔扁平上皮癌による顎骨浸潤モデルを改良し、よりヒトの病理組織像に近いモデルを確立することを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
成果報告のため、論文投稿と別刷代として30万円、英文校正として2万円を、また学会発表に係る旅費を10万円を確保する以外は、すべて研究推進に必要な消耗品費にあてる予定である。
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