研究課題/領域番号 |
23592707
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
松尾 拡 九州歯科大学, 歯学部, 准教授 (70238971)
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研究分担者 |
自見 英治郎 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (40276598)
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キーワード | NF-kB / 口腔扁平上皮癌 / 顎骨浸潤 |
研究概要 |
癌組織では恒常的に転写因子NF-kBが活性化していることや、NF-kBの活性化と口腔扁平上皮癌(OSCC)細胞の悪性度が相関することが報告されている。我々はこれまでに、マウスSCC顎骨浸潤モデルに対し、NF-kBの選択的阻害剤NBDペプチドを局所投与すると、顎骨浸潤が抑制されることを報告した(Furuta et al., Int J Cancer 2012 131:E625-635)。そこで今回我々はNF-kBの阻害剤による顎骨浸潤抑制効果の分子メカニズムを明らかにすることを目的とした。ヒトおよびマウスOSCC細胞株をTNFaで刺激して蛍光免疫染色およびWestern blotting法を用いてNF-kBの活性化を検討したこところ、刺激後15分でNF-kB のメインサブユニットであるp65の核移行が観察された。しかし、NF-kBの選択的阻害剤であるBAY11-7082またはIMD-0560で前処理した後にTNFaで刺激すると、p65のリン酸化は抑制され、p65の核移行は阻害された。また、これらのNF-kB阻害剤はTNFa刺激によるSCC細胞のマトリクスメタロプロテアーゼの基質分解活性を抑制し、浸潤能の活性化を抑制した。さらにマウス咬筋下顎角部より、マウスOSCC細胞を接種し、1週間後からIMD-0560を局所投与すると、腫瘍の増大と頬骨弓の破壊が抑制された。以上の結果から、NF-kB阻害剤はNF-kBの活性を阻害することで、マウスおよびヒトの癌細胞による基質分解活性を抑制し、浸潤能を抑制することでOSCC細胞の顎骨浸潤を抑制していると考えられる。。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回臨床治験に用いられている新規NF-kB阻害剤IMD-0560を用いて、マウスおよびヒト癌細胞による基質分解活性を抑制することを明らかにした。昨年確立した顎骨浸潤モデルを用いて、IMD-0560が顎骨浸潤を抑制するというプレリミナリーな実験結果を得ていることで「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
新規NF-kB阻害剤IMD-0560による癌細胞のアポトーシスの誘導メカニズム、およびマトリクスメタロプロテアーゼの発現と活性の抑制効果を詳細に検討する。さらに顎骨浸潤モデルを改良し、口腔扁平上皮癌接種後、腫瘍が増大した後から、IMD-0560を局所投与し、より治療を目指した投与プロトコールを決定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
成果報告のため、論文投稿と別刷代として30万円、英文校正として2万円を、また学会発表に係る旅費を10万円を確保する以外は、すべて研究推進に必要な消耗品費にあてる予定である。
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