研究課題/領域番号 |
23592709
|
研究機関 | 奥羽大学 |
研究代表者 |
玉井 利代子 奥羽大学, 歯学部, 准教授 (90367566)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 歯周病原性細菌 / Porphyromonas gingivalis / 侵入 / Candida albicans / 混合感染 / 歯周病 |
研究概要 |
本研究では、歯周病原性細菌 Porphyromonas gingivalis による歯周組織構成細胞をはじめとした宿主細胞への侵入機構と口腔常在の真菌である Candida albicans またはその菌体成分による P. gingivalis の侵入増強メカニズムを明らかにすることを目的として、これら細菌の侵入にかかわる宿主細胞のタンパク質分子の動態ならびに関連する菌体成分について探索した。申請者は、これまでに C.albicans 加熱死菌(HKCA)での3時間前培養が P. gingivalis の宿主細胞への侵入を増加する結果を報告した。さらに、その侵入増加効果が C.albicans 菌体成分のレセプターであるdectin-1を介して起こる可能性を示唆していたので、本年度は HKCAに対する歯肉癌上皮細胞Ca9-22の応答を検討した。その結果、(1) HKCA によるCa9-22細胞の reactive oxygen species(活性酸素種)産生は3時間以内でみられなかった。(2) HKCA (MOI100)添加15分後に、Ca9-22細胞のSyk分子が活性化した。(3) HKCA によって、Ca9-22細胞のPLCγ1分子が増加した。以上の結果から、C. albicans は、dectin-1を介して P. gingivalis の宿主細胞への侵入増加に関与するシグナルを与えることが考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
結果をまとめて発表した(雑誌論文1件、学会発表2件)。
|
今後の研究の推進方策 |
Candida albicans 加熱死菌 (HKCA)、C. albicans由来菌体成分または菌体外タンパク質に対する歯肉癌上皮細胞Ca9-22の応答を検討することによって、 C.albicans またはその菌体成分による P. gingivalis の侵入増強メカニズムを明らかにする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
1.真菌の菌体成分または菌体外タンパク質による P. gingivalis の宿主細胞侵入増強:Ca9-22細胞と HKCA, C. albicans 由来菌体成分または抽出物で前培養後、培地による洗浄をおこなってから、 P. gingivalis を加える。90分間共培養後、メトロニダゾールおよびゲンタマイシンを含む培養液を用いて培養し、細胞外の菌体を除去する。次に蒸留水で種々のヒト細胞を溶解後、同溶解液をヘミン、メナジオン添加血液寒天培地に播種し嫌気培養する。1週間後に得られた黒色コロニー数を算定する。 2.細胞表面分子の発現変化の検討:HKCA または1. で P. gingivalis 侵入増加がみられた C. albicans 由来抽出物でCa9-22細胞を培養し、菌体認識レセプターや接着分子、細胞骨格関連分子などの細胞表面または内部のタンパク分子の発現変化の有無をフローサイトメトリーまたはウエスタンブロット法で検討する。3.シグナル伝達分子のリン酸化検出:HKCA または1.で P. gingivalis 侵入増加がみられた C. albicans 由来抽出物と培養したCa9-22細胞の全タンパク質を抽出、ウエスタンブロット法やELISA法またはフローサイトメトリーで caveolae を構成する caveolin-1 などのシグナル伝達分子のリン酸化を検出する。4.P. gingivalis の細胞侵入増加に対する抑制:2.と3.で発現変化またはリン酸化がみられた宿主タンパク質に対する抗体または抑制剤でCa9-22細胞を前処理後、1.と同様に、C. albicans による P. gingivalis の宿主細胞への侵入増加に対する抑制の有無を検討する。
|