研究課題/領域番号 |
23592709
|
研究機関 | 奥羽大学 |
研究代表者 |
玉井 利代子 奥羽大学, 歯学部, 准教授 (90367566)
|
キーワード | 歯周病原性細菌 / Porphyromonas gingivalis / 侵入 / Candida albicans / 混合感染 / 歯周病 |
研究概要 |
本研究では、歯周病原性細菌Porphyromonas gingivalisによる宿主細胞への侵入機構とCandida albicansまたはその菌体成分によるP. gingivalis侵入菌数増加のメカニズムを明らかにすることを目的として、これら微生物の侵入にかかわる宿主細胞のタンパク質分子の動態ならびに関連する菌体成分について探索する。申請者は、これまでにC.albicans加熱死菌(HKCA)での前培養が、P. gingivalisの宿主細胞への侵入を増加する結果を報告した。さらに、その侵入増加がC. albicans菌体成分のレセプターdectin-1を介して起こる可能性を示唆したので、昨年度に引き続きC.albicans生菌またはHKCAに対する歯肉癌上皮細胞Ca9-22の様々な応答とシグナル伝達に関与するレセプターの発現を検討した。その結果、(1)Ca9-22細胞は、DC-SIGN,Toll-like receptor 2,protease-activated receptor(PAR)-1,PAR-2をわずかに発現していた。さらに、膜上のgalectin-3発現が明らかになった。また、同細胞のgalectin-3発現はHKCAまたはP. gingivalisとの共培養による増減はなかった。一方、MAC-1の発現は検出できなかった。(2)HKCAとの共培養によるCa9-22細胞のIL-6およびIL-8産生がみられたが、CAWSによる同細胞の炎症性サイトカイン産生はなかった。さらに、A549細胞の、HKCAによるIL-6およびIL-8産生はみられなかった。(3)C. albicans生菌(MOI1)またはHKCA添加によって、Ca9-22細胞のgalectin-3放出が増強した。(4)無血清下では、C. albicans生菌はNF-κBの活性化を惹起しなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたが、Ca9-22細胞のgalectin-3発現とCandida albicans添加による同細胞のgalectin-3放出増強がみられた。Galectin-3はグラム陰性菌外膜に存在するLPSと結合することから、同分子の動態はグラム陰性菌であるPorphyromonas gingivalisによる宿主細胞への侵入増加に関与する可能性がある。
|
今後の研究の推進方策 |
Candida albicans加熱死菌 (HKCA)、C. albicans由来菌体成分または菌体外タンパク質に対する歯肉癌上皮細胞Ca9-22の応答を検討することによって、 C. albicans またはその菌体成分による P. gingivalis の侵入増強メカニズムを明らかにする。今年度は、前述の galectin-3とP. gingivalis の侵入の関係を検討する。さらに、C. albicans添加によるCa9-22細胞のgalectin-3放出増強のメカニズムを調べる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
1.真菌の菌体成分または菌体外タンパク質によるP.gingivalisの宿主細胞侵入増強:Ca9-22細胞とHKCA,C.albicans由来菌体成分または抽出物で前培養後、培地による洗浄をおこなってから、P.gingivalisを加える。90分間共培養後、メトロニダゾールおよびゲンタマイシンを含む培養液を用いて培養し、細胞外の菌体を除去する。次に蒸留水で種々のヒト細胞を溶解後、同溶解液をヘミン、メナジオン添加血液寒天培地に播種し嫌気培養する。1週間後に得られた黒色コロニー数を算定する。 2.Galectin-3添加によるP.gingivalisの宿主細胞侵入増強の有無の検討:Ca9-22細胞とレコンビナントgalectin-3で前培養後、MEM培地で洗浄をおこなってから、P.gingivalisを加える。または、レコンビナントgalectin-3とP.gingivalis を同時に加える。P.gingivalisとCa9-22細胞の共培養後は1.に準ずるが、galectin-3は血清に含まれるので無血清下で行う。 3.C.albicansによる細胞内galectin-3および膜上同分子の増減の検討:C.albicans生菌または加熱死菌をCa9-22細胞と共培養後、細胞内タンパク質と膜タンパク質を抽出および精製し、ウエスタンブロット法でgalectin-3発現を検討する。 4.細胞骨格関連分子の検討:C.albicans生菌、HKCAまたはC.albicans由来抽出物と培養したCa9-22細胞の全タンパク質を抽出、ウエスタンブロット法でPI3Kなどのリン酸化を検出する。 5.遺伝子ノックダウン宿主細胞株への細菌侵入の検討:siRNAによるGalectin-3遺伝子ノックダウン宿主細胞株へのP.gingivalis侵入を1.と同様に検討し、野生型宿主細胞の場合と比較する。
|