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2011 年度 実施状況報告書

メッケル軟骨の消失機構とその意義

研究課題

研究課題/領域番号 23592710
研究機関明海大学

研究代表者

天野 修  明海大学, 歯学部, 教授 (60193025)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードメッケル軟骨 / マウス / 第1鰓弓 / 軟骨消失 / オートファジー / HGF
研究概要

メッケル軟骨の消失機構の解明のため,消失機構に関与すると考えられたhepatocyte growth factor(HGF)についての免疫組織化学的および器官培養法による実験発生学的解析を行った。<結果1>免疫組織化学:E12からE16までの成長中のメッケル軟骨前部および中間部では,軟骨細胞のHGFおよびcMetに対する免疫活性が認められた。前者は細胞質に,後者は細胞膜に局在した。この結果から,HGFがautocrineまたはparacrine的にメッケル軟骨自身に作用していることが強く示唆された。さらに吸収部に隣接した部位では,軟骨細胞は肥大し,HGFおよびcMetに対する免疫活性は顕著に減弱または消失した。<結果2>器官培養:無血清培地中で10日間,E10のマウス第1鰓弓下顎突起を培養すると,ほぼE14-15に相当するメッケル軟骨が発生した。培地中にリコンビナントHGFを添加すると,形態は様々だが,メッケル軟骨の全長が延長した。切片の解析では,太さや軟骨細胞の密度には有意な変化は認められなかった。NK4を培地中に投与すると,対照群より短いメッケル軟骨が発生した。また,ビーズに浸透させて下顎中央のメッケル軟骨周囲に投与すると,メッケル軟骨はビーズから遠ざかるような位置に発生した。<結論>以上の結果から,HGFはメッケル軟骨の増殖の他,移動に作用して,特徴的な細長い形態の形成に重要な役割を果たすことが示唆された。また,軟骨細胞の発現するHGF/cMet系の発現低下により,軟骨細胞の肥大化およびメッケル軟骨の吸収・消失への関与が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の直接的解析対象であるオートファジー関連因子の発現については,入手した抗体に問題があり十分な研究データの収集ができなかった。しかし,消失に関与するHGFについては,予定以上の成果を得ることができた。即ち,器官培養系への投与(過剰状態の再現)では長さの成長の促進が,拮抗薬の投与(不足状態の再現)では消失に先立つ肥大化関連因子の発現の亢進が認められた。このらの現象は,子宮内でのメッケル軟骨の成長と消失に伴って生じる現象と一致しており,生体内の状態をうまく再現できた思われた。従って,成長期と消失期でメッケル軟骨内のHGFの発現・分泌量の変化がそれ自体の成長・消失を調節していることが強く示唆された。さらに実験的に消失現象をin vitroで再現できることが分かったので,このシステムを利用してオートファジーを解析することが可能となると思われた。器官培養系で、メッケル軟骨の発生から消失までを完全にシミュレートできる実験系は無く,成長期と消失期を分離して解析する必要があったが,本研究結果から前者の系で消失の前兆現象までを再現できることがわかったのは,今後の実験の進行に大きな成果である。 以上の状況から,当初の予定と比較して凹凸は有るものの,おおむね順調に推移していると考えられた。

今後の研究の推進方策

本年度もオートファジー関連因子について,新規の抗体を入手して引き続き解析を進める。どうしてもタンパクレベルでの解析ができない場合,遺伝子発現での解析に切り替え,in situ hybridization法による解析を行う。また抑制実験にはSiRNAを利用する。 さらに近年,オートファジー関連因子のHIFを誘導する低酸素応答システムの解析が進んできたことから,器官培養系への低酸素状態の再現を試み,メッケル軟骨の発生・消失への直接的な影響を形態学的に解析する。さらにHIF-1がミトコンドリアから放出されたアセチルCoAの脂肪酸への転換に関与すること,また脂肪酸のトリグリセロイドへの転換にHIF-2が関与することが分かったので,脂肪酸の細胞質内輸送に関与する脂肪酸結合タンパクの発現についても解析を試みる。 また,初年度に試行的な実験に留まっていたメッケル軟骨の微小手術についても、引き続き実験を進め,科学骨発生に与える影響を解析する。また下顎骨発生に先立つ下歯槽神経の進入経路についても神経系マーカーを利用した免家器組織化学を行う。

次年度の研究費の使用計画

昨年度直接経費で購入を予定した凍結ミクロトームは間接経費および大学の研究経費で購入することができたので,本年度は主に試薬,実験動物,実験器具等の消耗品の購入に充てる予定である。1)試薬について:特にオートファジー関連因子については,入手可能な抗体については解析が可能なようにする。2)実験動物について:器官培養実験を本格化させるため,妊娠マウスを購入する。また脂肪酸結合タンパク質の解析については,ノックアウト動物の入手も試みる。3)研究器具について:微小手術用具の購入を行う。特に眼科手術用メスは柄がプラスチックのものを購入して,刃先の方向を火であぶることにより変えることができるようにする。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Localization of heat shock protein 27 (hsp27) in the rat gingiva and its changes with tooth eruption.2011

    • 著者名/発表者名
      Sasaki A, Yamada T, Inoue K, Momoi T, Tokunaga H, Sakiyama K, Kanegae H, Suda N, Amano O.
    • 雑誌名

      Acta Histochem Cytochem

      巻: 44 ページ: 17-24

    • DOI

      21448314 [PubMed]

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Negative regulation of NaF-induced apoptosis by Bad-CAII complex.2011

    • 著者名/発表者名
      Otsuki S, Sugiyama K, Amano O, Yasui T, Sakagami H.
    • 雑誌名

      Toxicology

      巻: 287 ページ: 131-136

    • DOI

      21708216 [PubMed - indexed for MEDLINE]

    • 査読あり
  • [学会発表] マウス脛骨骨端板のseptoclastsにおける表皮型脂肪酸結合タンパク質(E-FABP)の免疫組織化学的局在と発生過程における分布変化2012

    • 著者名/発表者名
      坂東康彦,崎山浩司,井上勝元,瀧澤将太,大和田祐二,天野 修
    • 学会等名
      日本解剖学会 第117回総会・全国学術集会
    • 発表場所
      甲府
    • 年月日
      2012.3.27
  • [学会発表] 硬組織における脳型脂肪酸結合タンパクの局在2012

    • 著者名/発表者名
      天野 修,坂東康彦,崎山浩司,大和田祐二
    • 学会等名
      日本解剖学会 第117回総会・全国学術集会
    • 発表場所
      甲府
    • 年月日
      2012.3.27
  • [学会発表] 実験動物の唾液腺の免疫組織化学における問題点2011

    • 著者名/発表者名
      天野 修
    • 学会等名
      日本組織細胞化学会 第52回総会・学術集会(招待講演)
    • 発表場所
      金沢
    • 年月日
      2011.9.25
  • [学会発表] マウス骨端板軟骨のseptoclastsにおける表皮型脂肪酸結合タンパク(E-FABP )の局在2011

    • 著者名/発表者名
      坂東康彦,崎山浩司,井上勝元,大和田祐二,天野 修
    • 学会等名
      日本組織細胞化学会 第52回総会・学術集会
    • 発表場所
      金沢
    • 年月日
      2011.9.24
  • [学会発表] 成長および食餌による口腔周囲筋の心筋型脂肪酸結合タンパク(H-FABP)の発現変動2011

    • 著者名/発表者名
      桃井知子,坂東康彦,井上勝元,崎山浩司,大和田祐二,天野 修
    • 学会等名
      日本組織細胞化学会 第52回総会・学術集会
    • 発表場所
      金沢
    • 年月日
      2011.9.24

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公開日: 2013-07-10  

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