PorSS(Por secretion system)は慢性歯周炎原因菌Porphyromonas gingivalisの病原性や増殖に必須なタンパク質をC末端領域ドメインC-terminal domain(CTD)に依存して細胞外に分泌する新規のタンパク質分泌系である。Sovタンパク質はCTDタンパクの分泌に必須な外膜タンパク質として申請者が同定・命名・報告したがその詳細な機能的役割は現在も明らかにされていない。Sovの機能を解明するため、(1)Hisタグを導入したSovの精製系の構築と(2)PorSS およびSovの機能を阻害する化合物のスクリーニングを行った。 (1)Sovの結合サブユニットを同定してSovの機能を推定する。Sovのニッケルカラムを用いたアフィニティ精製には通常の2倍の長さのHisタグ(His×12)が必要であった。このHisタグ(His×12)を導入したSov-HisをP. gingivalisで発現させ、その細胞破砕液からニッケルカラムに結合性の未変性Sov-Hisを精製した。しかしHisタグの導入によってSov-Hisの発現量が低下するため、目的の実験に必要な量のSov-His精製標品を回収することが出来なかった。これはSov-Hisが本菌のプロテアーゼであるジンジパインによって分解されることが原因であると推定した。CTDの切断はジンジパインの分泌後修飾反応であり酵素PG0026が触媒する。PG0026の遺伝子の挿入変異はジンジパインの活性が野生型よりも低下することから、PG0026の挿入変異株にSov-Hisを発現したところ野生型と同レベル程度まで発現量が回復することを突き止めた。この発現系をSov-Hisの精製系として利用可能か検証を行っている。 (2)昨年度から引き続き、東京大学創薬オープンイノベーションセンターが保有する化合物ライブラリー(計約14万個)から、P. gingivalisの最少培地と複合培地での増殖性からPorSSの分泌阻害性物質やその他の種々の阻害物質の探索を行った。本年度は約3万個の化合物をスクリーニングした。
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