研究課題/領域番号 |
23592718
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
美島 健二 昭和大学, 歯学部, 教授 (50275343)
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研究分担者 |
斎藤 一郎 鶴見大学, 歯学部, 教授 (60147634)
井上 裕子 鶴見大学, 歯学部, 准教授 (50367306)
梁 洪淵 鶴見大学, 歯学部, 講師 (10298268)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 再生医療 / 唾液腺 / iPS細胞 |
研究概要 |
本研究は、in vitroでiPS細胞から唾液腺細胞を分化誘導する際に必要とされるフィーダー細胞の樹立を目的とし施行された。マウスの顎下腺組織は、胎生11.5日(E11.5)に口腔粘膜上皮の肥厚に始まり、周囲の神経堤由来の間葉組織に誘導され、胎生13.5 日(E13.5)からbranching構造を形成することが知られている。そこで、E11.5およびE13.5のC57BL/6マウス胎仔より、実体顕微鏡下で周囲間質組織を含めて唾液腺組織をそれぞれ摘出後、Trypsin処理し細胞を分散した。分散した細胞を10%FBS添加DMEMで培養し、細胞を不死化する目的で、SV40 large T抗原遺伝子発現プラスミド(pMK16)をFugeneによりトランスフェクションした。さらに、limiting dilution法によりsingle cloneを単離し、単離した細胞におけるSV40 large T抗原の発現を確認した上で、上皮系のマーカー遺伝子の発現(E-cadherin, CK14, およびCK18)および間葉系のマーカー遺伝子の発現(vimentin)をRT-PCRにより解析した。その結果、vimentin遺伝子発現陽性でE-cadherin, CK14, およびCK18上皮系マーカー発現陰性である間質細胞株が、それぞれ樹立された。次に、これらの樹立した間質細胞上でiPS細胞を一週間培養した後、唾液腺特異的発現遺伝子としてM3AchR、β2-AR、AQP5およびAmylaseの発現を検証した。その結果、E11.5マウス胎仔より樹立された間質細胞上で分化誘導したiPS細胞ではβ2-ARの発現誘導がみられたものの、その他の遺伝子に発現誘導は認められなかった。次年度では、さらにactivinなどの分化誘導因子を応用することによりiPS細胞から唾液腺細胞を分化誘導する方法を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度では、マウス胎仔由来唾液腺間質細胞が樹立された。また、これらの細胞上でiPS細胞を分化誘導し、分化誘導されたiPS細胞における唾液腺特異的遺伝子の発現について解析がなされた。したがって、本研究は当初の計画通りにおおむね進行していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度にマウス胎仔唾液腺由来間質細胞が樹立されたものの、これらの樹立細胞がこれまでiPS細胞の分化誘導に応用されてきたOP9やPA6といったフィーダー細胞よりも、iPS細胞の唾液腺細胞への分化誘導性に優れているか否かを検証することは重要な課題である。また、フィーダー細胞単独での分化誘導が不可能な場合も想定されるため、既知のあるいは新規の分化誘導因子を応用することが考えられる。これらの候補因子のscreeningに際しても、分化したiPS細胞が客観的に唾液腺細胞に分化誘導されたことを評価するシステムが必要である。この目的のため、唾液腺由来のamylase promoterの下流でluciferaeを発現するconstructを導入したiPS細胞を樹立する。次に、樹立したiPS細胞の分化誘導時にactivin、FGF10、Pitx2およびTwsg1などの唾液腺分化誘導に関与する因子を応用しluciferase活性により、その効果を判断しより効率のよい分化誘導条件を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続きiPS細胞の分化誘導実験を行う必要があるので、細胞培養経費や関連試薬の購入費が必要である。また、唾液腺間質細胞のcharacterizationを行う目的で、cDNA microarray解析を行う必要があり、そのための受託研究費が必要である。加えて、cDNA microarray で得られたデータを検証するためにRT-PCRなどの核酸関連試薬を購入する必要がある。さらに、iPS細胞から分化誘導した唾液腺細胞の移入実験を行うため動物飼育費が必要となり、これらの実験に対する研究補助員の雇用が必要である。
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