研究課題/領域番号 |
23592718
|
研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
美島 健二 昭和大学, 歯学部, 教授 (50275343)
|
研究分担者 |
斎藤 一郎 鶴見大学, 歯学部, 教授 (60147634)
井上 裕子 鶴見大学, 歯学部, 准教授 (50367306)
梁 洪淵 鶴見大学, 歯学部, 講師 (10298268)
|
キーワード | 再生医療 / 唾液腺 / iPS細胞 |
研究概要 |
前年度の結果では、E11.5のマウス胎仔由来間質細胞ををフィーダーとして分化誘導したiPS細胞で、β2-adrenergic receptorの発現が亢進していることが明らかとなった。しかしながら、M3-acetylcholine receptor、Aqp5およびamylaseといった他の唾液腺特異的遺伝子の誘導が認められなかったことから、本年度は、さらに分化誘導条件を検討した。ES/iPS 細胞を用いた分化誘導方法の実際は、生体内における組織・臓器の発生・分化過程をin vitro において段階的に再現することに力が注がれている。そこで、唾液腺原基が口腔粘膜上皮の陥入により発生することを利用して、口腔粘膜上皮から唾液腺を段階的に誘導し、さらに前年度に樹立したフィーダー上での培養を試みた。すなわち、理化学研究所の笹井らが、ES細胞から下垂体組織を分化誘導する際に口腔粘膜上皮を介していることを報告しているので、本法(LCA-SFEBq法)を用いてまず、口腔粘膜上皮の誘導を試みた。具体的には、10,000個のiPS細胞をBMP4存在下でLCA-SFEBq法により6日間培養した。この際、作製された胚様体の最外層にpan-cytokeratin陽性、カドヘリン陽性の口腔粘膜上皮様組織が存在することを確認した。さらに、実態顕微鏡下で、胚様体の最外層を分離し、その後トリプシンで分散化し、唾液腺間質細胞上で7日間培養した後、唾液腺特異的遺伝子の発現をRT-PCRにより解析した。その結果、唾液腺特異的発現遺伝子であるAqp5やamylaseの発現上昇が確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の解析により、LCA-SFEBq法を応用することにより、iPS細胞から、より効率よく唾液腺細胞が誘導される可能性が示されたので、おおむね順調に進行していると思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
1. iPS細胞から唾液腺細胞を分化誘導する条件をより詳細に検討する目的で、唾液腺組織特異的なamylase promoterの下流でGFPを発現するプラスミドを導入したiPS細胞を作製する。さらに、本iPS細胞を唾液腺細胞に分化誘導後、GFP陽性細胞の割合をFACSにより測定し分化誘導効率を客観的に評価する。 2. 唾液腺間質細胞上でiPS 細胞から分化誘導した唾液腺細胞がin vivo においても3次元的に腺組織再構築能を有するか否かを検討する。すなわち、iPS細胞から唾液腺細胞を分化誘導した後、GFP陽性細胞をFACSにより分取する。次に、6週齢の雄性C57BL/6 マウスの顎下腺の一部を切除し、同部に分取した細胞とcollagen gel(Nitta gelatin)の混合物を埋入する。4週後に組織切片を作成し、移入細胞の腺組織再構築能を評価する。 3. OP9やPA6などのフィーダーと唾液腺間質細胞の遺伝子発現プロファイルを比較することにより、唾液腺分化誘導に必要な因子を同定する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
引き続きiPS細胞の分化誘導を行うと共にその発現遺伝子を解析するために、細胞培養や核酸実験に関連した経費が必要となる。また、iPS細胞から分化誘導された唾液腺細胞の腺組織再構築能を評価するために、マウスを用いた細胞移植モデルが必要となり、動物購入費用や飼育費用が必要となる。加えて、各種フィーダー細胞の遺伝子発現プロファイルを作製するためにcDNA microarrayを施行する予定で受託解析費用が必要となる。
|