研究課題/領域番号 |
23592721
|
研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
吉田 康夫 愛知学院大学, 歯学部, 准教授 (10315096)
|
研究分担者 |
吉村 文信 愛知学院大学, 歯学部, 教授 (50001962)
永野 恵司 愛知学院大学, 歯学部, 講師 (60367620)
長谷川 義明 朝日大学, 歯学部, 講師 (70460524)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | バイオフィルム / 口腔細菌 / インドール |
研究概要 |
トリプトファンの加水分解によって産生されるインドールは、近年病原性やバイオフィルム形成に関与するシグナル分子であることが明らかとなってきた。本研究では、Prevotella種におけるトリプトファン分解酵素をコードする遺伝子(tnaA)と同酵素の機能について検討した。P. intermedia ATCC 25611におけるtnaA遺伝子は大腸菌を用いた組換えタンパク質として精製し、その酵素学的性質を明らかにした。一方、P. intermediaにおいてtnaAの転写単位をRT-PCR法により検討した。また、22種のP. intermediaにおいて、そのインドール産生能を測定し、サザンハイブリダイゼーション法にてtnaAの有無について調べた。P. intermediaのトリプトファナーゼは、F. nucleatumやP. gingivalisのものと比較して、インドール産生能は低かったが、類似の性質を示した。同菌のtnaAは単独で転写されていた。22種のP. intermediaのうち、6種がインドール産生を示し、そのいずれもがP. intermedia由来tnaAとハイブリダイズする遺伝子を有した。残りの16種においては、インドール産生能もtnaA遺伝子の存在も認められなかった。Prevotella micansはインドール産生能を有するにも拘わらず、16S rRNA遺伝子を利用した系統樹解析において、インドール非産生グループに属した。このことは、同菌のtnaA遺伝子は比較的近年に他のP. intermedia種から移動したことが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度はPrevotella種におけるトリプトファン分解酵素をコードする遺伝子の解析を行い、その多様性を検討した。まず、口腔で分離された22種のPrevotella種にトリプトファン合成酵素をコードする遺伝子の有無をサザンハイブリダイゼーション法にて検討した。同時に同菌の組換え酵素を精製し、その酵素学的な性質を明らかにした。口腔微生物においてPrevotella種のインドール産生能についての詳細な検討は今まで報告されていなかったので、同菌を含むバイオフィルム形成について明らかにするために、不可欠な研究であった。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は、レンサ球菌をふくめ代表的な口腔微生物が産生する低分子代謝産物による、口腔微生物のバイオフィルム形成メカニズムについて、検討を進める予定である。本研究結果は、低分子代謝産物による口腔微生物のバイオフィルム形成メカニズムの解明と、その形成抑制薬の開発に大きく寄与することが期待される。一方、口腔レンサ球菌がショ糖を基質に合成する多糖体であるグルカンは、歯面における口腔バイオフィルム形成に重要な役割を果たす。口腔常在細菌であるS. sanguinisの多糖合成遺伝子であるgtfPをエリスロマイシン耐性遺伝子で不活化し、これらの野生株と変異株のどちらか一方と、他の口腔レンサ球菌を共培養し、バイオフィルム形成量を検討することによって、S. sanguinisの産生するグルカンのバイオフィルム形成に与える影響について検討する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度50万円以上の機器を購入する予定はなく、通常の研究用試薬、プラスチック、ガラス器具の購入に、予算の大部分を当てる予定である。また、本年度までの成果の発表を歯科基礎医学会で行う予定で有り、その学会出張にも一部予算を使用する予定である。
|