研究課題/領域番号 |
23592724
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研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
福島 久典 大阪歯科大学, 歯学部, 教授 (50103099)
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研究分担者 |
山根 一芳 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (40388369)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | バイオフィルム / 口腔膿瘍 / 病原性 |
研究概要 |
走査型電子顕微鏡とフローセルを用いたスクリーニングの結果,閉鎖性の骨膜下膿瘍から分離し,研究室で保存しているストレプトコッカス・インターメディウスの1株が菌体外多糖(exopolysaccharide: EPS)を産生し,バイオフィルムを形成していることが明らかになった.この菌株のバイオフィルム形成遺伝子検索の一助とするため,全ゲノム配列の解読を試みた.本菌株のゲノムDNAを抽出,精製し,物理的に切断後,GS Rapid Library Prep Kit(Roche Diagnostics)を用いてゲノムライブラリーを作製した.GS Junior Titanium emPCR Kitを用いライブラリーDNAを鋳型として,ビーズ上にDNAを増幅したのちGS Junior Titanium Sequencing Kitを用いてGS Junior Systemでパイロシークエンシングした. 得られたシーケンシングデータをGS de novo Assemblerを用いてアセンブルし,contigを構築した.Contig内の塩基配列からCDSsを予測し,データベース上で相同性の高い配列を検索した.ゲノム遺伝子をパイロシークエンス法で解析した結果,35,026,349bpの塩基をシーケンシングできた.また,平均リード長は457bpであった.アセンブルの結果,55のcontigを構築することができ,その内500bp以上の長さのcontigが44得られた. 遺伝子予測の結果,バイオフィルム形成に関与すると考えられている多糖の新生経路,分泌輸送経路の遺伝子,バイオフィルム形成調節に関与すると考えられているストレス応答系の遺伝子と相同性の高い領域が観察された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,当初予定していたストレプトコッカス・インターメディウスのバイオフィルム形成株を見出すことが出来た.また,予定していたトランスポゾンを用いたランダムミュータジェネシスによる遺伝子変異株を作製する前に,本研究の目的であるバイオフィルム形成関連遺伝子の検索のためにこの菌株の全ゲノム配列解読を先行し,上述の結果を得ており,おおむね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
ゲノム解析の結果,500bp以上の長さのcontigが44得られたことから,今後は更にシークエンシングを進め,coverageを上げると共に,これらのcontig間のgap closeを先行させる予定である. また,ストレプトコッカス・インターメディウスのバイオフィルム形成はglucoseによって増強されることが分かっている.したがって,glucoseの代謝遺伝子に着目した遺伝子解析を進める. 遺伝子予測の結果,ゲノム内にはバチルス・ズブチルスでバイオフィルム形成に重要な働きをしているα-phosphoglucomutaseのホモログや,シュードモナス・エルギノーサでバイオフィルム形成時に発現が増加する遺伝子のホモログが存在することが明らかになったため,これらの遺伝子群がバイオフィルム形成に関わっている可能性を考慮し,ノックアウト株を作製する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
バイオフィルム形成ストレプトコッカス・インターメディウスのゲノムDNAから作製したライブラリーを用いて,GS Junior Systemでパイロシークエンシングを継続し,coverageを上げる(GS Junior System試薬). ストレプトコッカス・インターメディウスをコンピテント化してトランスポゾンとともにエレクトロポレーションに供する.抗生物質加培地でトランスポゾンが挿入された株をスクリーニングする(1次スクリーニング)(トランスポゾンミュータジェネシス試薬).得られたコロニーのバイオフィルム形成性をチェックする.親株とトランスポゾン挿入株とで,液体培地の混濁具合あるいは沈殿の有無を比較する(2次スクリーニング).親株と異なるフェノタイプを示した株を走査型電子顕微鏡で確認する(3次スクリーニング)(走査型電子顕微鏡観察試薬).EPSノックアウト株を-80℃のディープフリーザーで保存する.EPSノックアウト株にトランスポゾンが挿入されているかどうかを確認する(PCR試薬).
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