研究課題/領域番号 |
23592724
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研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
福島 久典 大阪歯科大学, 歯学部, 教授 (50103099)
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研究分担者 |
山根 一芳 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (40388369)
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キーワード | バイオフィルム / 病原性 / ストレプトコッカス・コンステラタス |
研究概要 |
前年度、閉鎖性の骨膜下膿瘍から分離し、研究室で保存しているストレプトコッカス・インターメディウスの1株が菌体外多糖を産生してバイオフィルムを形成していることを明らかにし、ゲノムの全塩基配列の解読を試みた。本年度はGS Junior Systemを用いて得られたゲノムのシーケンシングデータを基に構築したcontig間のギャップをいくつかクロージングした。現在、contigを40にすることができており、それらの配列をさらに詳しく解析した。 ストレプトコッカス・インターメディウス、ストレプトコッカス・コンステラタス、ストレプトコッカス・アンギノーサスの3菌種はアンギノーサスグループレンサ球菌に分類され、その鑑別が困難であることが知られている。そこで我々はハウスキーピング遺伝子の16SリボソーマルRNA遺伝子,rec N遺伝子,gro EL遺伝子,tuf遺伝子による系統樹解析を用いて再同定したところ、本菌株はストレプトコッカス・コンステラタスの配列とクレイドを形成することが明らかになった。また、遺伝子予測によって、contig 1と8上にバイオフィルム形成に関与すると考えられる多糖の合成遺伝子を、contig 9上には分泌輸送経路の遺伝子を見出した。また、バイオフィルム形成調節に関与すると考えられるストレス応答系のオートインデユーサー2を産生するlux Sタンパクをコードする遺伝子と相同性の高い領域を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は,昨年度明らかにしたバイオフィルム形成株が、ストレプトコッカス・インターメディウスと同じアンギノーサスグループレンサ球菌であるストレプトコッカス・コンステラタスであることが明らかになった。そのため研究の方向性を多少修正する必要が生じ、進行もやや遅れているが、これらの菌種間では形質が類似しており、遺伝学的なツールも共通して用いることが分かったため、本菌株を用いて研究を進めることとした。また、ストレプトコッカス・コンステラタスは未だ全ゲノム配列が明らかになっておらず、本研究で明らかにしている全ゲノム配列と、既にデータベース上に報告されているストレプトコッカス・インターメディウスの臨床分離株のゲノム配列を比較することで、両菌種間の類似点や、相違、系統学的な分類基準なども明らかにすることが出来ると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き必要な部分からcontig間のgapをクロージングする予定である。 本菌株のバイオフィルム形成はglucoseによって増強される。ゲノム上の予測遺伝子からゲノム上にバチルス・ズブチリスでバイオフィルム形成に重要な働きをしているα-phosphoglucomutaseのホモログが2箇所存在することが明らかになっており、このうち片側の遺伝子のノックアウト株を作製した。しかし、変異株のバイオフィルム形成は減弱しているものの、完全には消失しておらず、残りのホモログもノックアウトする必要があり、平成25年度は、この両遺伝子のノックアウト株を樹立する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
ゲノム解析用のシークエンシング試薬、ギャップクロージング用のPCR試薬、ノックアウト株作製用のトランスポゾンなどを購入する予定である.
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