アメロジェニンはエナメル質基質タンパクとして見いだされたが、間葉細胞から軟骨細胞に分化促進する可能性が示唆されている。しかし、その作用機序は不明であった。近年、アメロジェニンは細胞内小胞膜の膜結合型受容体 LAMP-1 および LAMP-3に結合することが報告された。そこで軟骨細胞分化におけるアメロジェニンのシグナル伝達は間葉細胞膜表面に発現する LAMP-1 および LAMP-3 に結合することにより行われる可能性を検討するものである。 まず我々は成長板軟骨、およびin vitroにおける軟骨形成過程におけるアメロジェニン、LAMP-1およびLAMP-3の局在を免疫組織学的に検討した。その結果、成長板軟骨においてLAMP-1抗体に対する免疫反応は増殖軟骨細胞において陽性反応を示した。一方、LAMP-3抗体に対する免疫反応は増殖軟骨細胞において弱い反応を示した。またin vitroで形成された軟骨結節細胞において、LAMP-1およびLAMP-3抗体に対する免疫反応はいずれもin vivoにおける結果と同様であった。さらにin vitroにおける軟骨形成過程において、軟骨分化マーカー遺伝子発現上昇がみられたが、LAMP-1の遺伝子発現は減少した。続いて、アメロジェニンを主成分とするエナメルマトリックスデリバディブを用いて、軟骨細胞の細胞増殖におけるLAMPsの役割を検討した。その結果、EMDを細胞培養プレートにコーティングをして、マウス軟骨細胞株ATDC5を軟骨細胞分化培地でLAMP-1抗体を添加して培養した場合、EMDをコーティングしなかった群と細胞増殖に有意な差は認められなかった。またLAMP-1添加群では軟骨細胞分化マーカーの遺伝子発現が抑制されていた。これらのことは、LAMP-1はアメロジェニンによる軟骨細胞増殖および分化に関与することを示唆している。
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