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2012 年度 実施状況報告書

象牙質の成長線の周期と体内時計の情報伝達分子のメラトニンの分泌リズムとの関係

研究課題

研究課題/領域番号 23592727
研究機関高知学園短期大学

研究代表者

三島 弘幸  高知学園短期大学, その他部局等, 教授 (30112957)

研究分担者 田畑 純  東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (20243248)
服部 淳彦  東京医科歯科大学, 教養部, 教授 (70183910)
里村 一人  鶴見大学, 歯学部, 教授 (80243715)
キーワードメラトニン / 歯学 / 象牙質 / 成長線 / 生物時計 / 細胞・組織 / 遺伝子
研究概要

本年度では材料としてSDラットの妊娠ラットにメラトニン経口投与を行い、出生後5日と6日令及び7日令と8日令のSDラットにて、夜間と昼間に歯胚を摘出した。その後、対照標本と投与群と比較した。舌側象牙質の成長線の形状解析と、象牙前質中の石灰化球の数と大きさの測定を行った。次に、SEM-EDS分析を行った。5日令、8日令夜間標本の対照群の切歯の舌側象牙質において、2本の成長線が観察された。昼間標本では象牙前質側の成長線が不明瞭だった。昼間及び夜間標本の対照群と低濃度群ではヘマトキシリンに濃染された成長線と成長線の間には、ヘマトキシリン淡染層が観察された。また、対照群と比較して低濃度群では濃染層の幅が広がり、淡染層の幅が狭くなっていた。高濃度群では成長線の間の淡染層は認められなかった。低濃度群や高濃度群では象牙前質に石灰化球が数多く観察された。メラトニン投与濃度が上昇するにつれて象牙前質中の石灰化球の数は有意に増加していた。5日令、8日令共にメラトニン投与群では、対照群では観察されなかった臼歯の歯冠象牙質の中央部に成長線が観察された。石灰化球の大きさは5日令、8日令共に大きくなっていた。SEM-EDS分析では、CaとP含有量が対象群と比べ、メラトニン投与群で増加していた。組織学的観察の結果、対照群と比べるとメラトニン投与群では淡染層が徐々に狭くなっていた。これはメラトニンを恒常的に与えたために、メラトニンにより象牙芽細胞が活性化し、石灰化が亢進し、濃染層が広くなったと考えられる。メラトニンが骨代謝周期を変化させることから、それと同様に歯における石灰化の代謝周期にも変化が起き、成長線の間隔を変化させたと考えられる。SEM-EDS分析では、Caが増加する傾向が見られた。これはメラトニン投与により、石灰化が亢進し、Caの含有量が増えたものだと考えられる

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究ではメラトニンと象牙質における成長線の周期性との関連を解明し、その作用機序を探ることを目的とした。本実験には出生後5日と6日令及び7日令と8日令のSDラットを用いた。これらのラットを①対照群(0.5%アルコール含有飲料水)、②低濃度群(0.5%アルコール+20µg/mlメラトニン含有飲料水)、③高濃度群2群(0.5%アルコール+100µg/mlメラトニン含有飲料水、あるいは0.5%アルコール+1000µg/mlメラトニン含有飲料水)の4群に分けた。妊娠SDラットにメラトニン含有飲料水の経口投与を胎令19日から始め、出産後6日令あるいは8日令まで行った。本研究の結果、淡染層は低濃度群では狭くなり、高濃度群では消失した。これはメラトニンを恒常的に与えたために、メラトニンにより象牙芽細胞が活性化し、石灰化が亢進し、濃染層が広くなったと考えられる。アザン染色の結果では、メラトニン投与群の切歯や臼歯において、新たな成長線が1本確認できた。アザン染色は膠原線維を染める特殊染色であることから、メラトニン投与によって象牙芽細胞のコラーゲン分泌が促進され、膠原線維の密度が増加し、成長線が形成されたと考察される。石灰化球の数はメラトニン投与の濃度に依存して増加しており、有意差が認められた。メラトニンが象牙芽細胞の石灰化機構や成長線の形成に関与していると考察される。概日リズム(サーカディアンリズム)の同調効果があるメラトニンが象牙芽細胞の石灰化代謝周期とコラーゲン分泌周期を促進し、成長線の形成間隔を変化させたと考えられる。メラトニンが成長線の周期性や成長線形成に関与しているという作業仮説を裏付ける結果となった。さらにメラトニンによって同調される末梢の生物時計が象牙芽細胞に存在している可能性が示唆された。

今後の研究の推進方策

メラトニンが成長線の周期形成に関与している以外に、象牙質の石灰化を亢進させ、象牙質中のアパタイト結晶成長にも影響を与える可能性が示唆された。次年度は、対照群とメラトニン投与群の象牙質の元素組成を比較するため、SEM-EDS分析を行い、さらに顕微レザーラマン分光装置により、PO43-の分子結合状態を解析したい。また石灰化の亢進を検討するため、ALP染色を試み、ALP活性を解析したい。生後3日目から象牙質の石灰化が開始されることが判明した。しかし、2本の成長線の対照群と投与群の比較では、成長線の周期や形成出現の解明にはまだ不十分なところがある。より長期に渡る投与が必要と判断された。このため、メラトニン投与後、出生後7日―10日の試料数を今後もさらに増やし、成長線の周期性の変化をより詳細に追求する。TEMでの観察で、アパタイト結晶の大きさやに変化が観られるかを観察する。またメラトニン投与によりコラーゲン線維の密度変化が認められるかTEMで観察する。メラトニン投与によりメラトニンレセプターのmRNA発現の日周変化を昼間と夜間とで分析し、遺伝子発現の解析を行う。時計遺伝子の探索が可能かどうか、プライマー作製の検討を行う。
抗メラトニン抗体染色を用いた免疫組織学的研究を行った。だが、歯胚組織中のメラトニン受容体の局在は判明していない。他の研究者の結果では象牙芽細胞に受容体が局在していることが判明しており、なぜ免疫染色がうまくいかないかを分担研究者と討議している。試料の摘出にお問題、固定条件の問題かどうか詳細に検討していく。場合により、未脱灰試料に変えて、染色を試みたい。問題点を解決して、再度免疫組織を試み、象牙芽細胞の局在を検証したい。またメラトニン投与により、受容体細胞がどのように変化するなどを形態学や免疫組織学的に検討したい。

次年度の研究費の使用計画

平成24年度に得られた結果を基にして、下記の実験を行う。
I、メラトニン投与の実験において、より長期間の投与(出生後7日―10日)をした場合の成長線の周期性のデータ収集を行う。メラトニン投与の培養歯胚の象牙質の組成の解析を行う。脱灰試料を用いて、HE染色やアザン・マロリー染色を施し、観察する。さらに抗メラトニン抗体を用いた免疫組織化学法を行い、レセプターの局在を突き詰めたい。またin situ hybridization、EPMAや顕微レザーラマン分光装置による解析を行う。(里村、田畑、三島分担)。II、メラトニン受容体(膜)遺伝子解析。歯堤形成期や蕾状期の歯胚の摘出(三島分担)。歯堤形成期や蕾状期でのメラトニン受容体(膜)遺伝子発現を調査し、メラトニン合成酵素のmRNAの発現を検索する(服部、鈴木分担)。III、象牙質での成長線の化学組成や結晶組成の解析。歯を摘出する(三島分担)。周期性の異なる成長線の化学組成や結晶組成の調査を引き続き行う。研磨標本を用いて顕微レザーラマン分光装置やX線回折法、SEM-WDS法を用いて、分析する。FIB法による超薄切片作成技術を改良し、その切片を透過型電子顕微鏡によるコラーゲン線維やアパタイト結晶の構造解析をする(三島分担)。得られた結果を取りまとめ、これまでの研究成果の発表を国内外の学会で行い、研究成果の討論を行う。
培養歯胚の発生段階(鐘状期歯冠形成期や歯根形成期)に、メラトニンを経時的に投与し、メラトニン投与の培養歯胚の象牙質の成長線の形成過程や石灰化機構過程、あるいは組成の解析を行う計画(田畑、三島分担)を立てており、この研究計画に向けての行動計画を分担研究者と綿密に検討する。

  • 研究成果

    (19件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (12件)

  • [雑誌論文] Static and dynamic hypergravity responses of osteoblasts and osteoclasts in Medaka scales2013

    • 著者名/発表者名
      Yano S、Kitamura K、Satoh Y、Nakano M、Hattori A、Sekiguchi T、Ikegame M、Nakashima H、Omori K、Hayakawa K、Chiba A、Sasayama Y、Ejiri S、Mikuni-Takagaki Y、Mishima H、Funahashi H、Sakamoto T、Suzuki N
    • 雑誌名

      Zoological Science

      巻: 30 ページ: 217-223

    • 査読あり
  • [雑誌論文] チーム基盤型学習におけるピア評価システムの構築2013

    • 著者名/発表者名
      濱田美晴、髙畑貴志、三島弘幸
    • 雑誌名

      高知学園短期大学紀要

      巻: 43 ページ: 1-8

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 魚類のウロコを用いた評価系の開発と骨代謝研究への応用2012

    • 著者名/発表者名
      鈴木信雄、船橋久幸、耿啓達、柿川真紀子、山田外史、廣田憲之、北村敬一郎、清水宣明、早川和一、三島弘幸、岩坂正和、上野照剛、大森克徳、矢野幸子、池亀美華、田淵圭章、和田重人、近藤隆、服部敦彦
    • 雑誌名

      まぐね/Magnetics Jpn

      巻: 7 ページ: 174-178

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 歯肉‐歯周病変部の歯石と歯肉縁下歯石の組織構造、化学組成および結晶の比較検討2012

    • 著者名/発表者名
      三島弘幸、大久保厚司、井上昌子、田中和夫、見明康雄
    • 雑誌名

      日本再生歯科医学会誌

      巻: 10 ページ: 13-19

  • [雑誌論文] 魚類のウロコを用いた宇宙生物学的研究:新規メラトニン誘導体のウロコ及び骨疾患ラットの骨代謝に対する作用2012

    • 著者名/発表者名
      鈴木信雄、大森克徳、井尻憲一、北村敬一郎、根本鉄、清水宣明、笹山雄一、西内巧、染井正徳、池亀美華、三島弘幸ほか37名
    • 雑誌名

      Space Utiliz Res

      巻: 28 ページ: 165-168

    • 査読あり
  • [雑誌論文] チーム基盤型学習における協同学習の効果に関する調査-能動的学習の効果と考察時間による分析-2012

    • 著者名/発表者名
      濱田美晴、髙畑貴志、三島弘幸、立川明
    • 雑誌名

      高知大学教育研究論集

      巻: 16 ページ: 15-22

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The connection between the periodicity of incremental lines in the tooth dentin and regulation by melatoin2012

    • 著者名/発表者名
      Mishima H, Hattori A, Suzuki N, Tabata MJ, Kakei M, Miake Y, Suzuki M
    • 雑誌名

      Bone

      巻: 50 ページ: S102

    • 査読あり
  • [学会発表] フッ素暴露は更年期女性の骨粗鬆症の動物モデル2012

    • 著者名/発表者名
      筧光夫、久保迪、寒河江登志朗、三島弘幸
    • 学会等名
      第7回バイオミネラリゼーションワークショップ
    • 発表場所
      東京 東京大学
    • 年月日
      20121201-20121201
  • [学会発表] 象牙質の成長線の周期とメラトニンの分泌リズムの関連2012

    • 著者名/発表者名
      三島弘幸、井上昌子、服部淳彦、鈴木信雄、田畑純、筧光夫、松本敬、里村一人、見明康雄
    • 学会等名
      第7回バイオミネラリゼーションワークショップ
    • 発表場所
      東京 東京大学
    • 年月日
      20121201-20121201
  • [学会発表] オルソパント所見における根尖病巣とアレルギーの関連2012

    • 著者名/発表者名
      大久保厚司、井上正明、藤永賢介、三島弘幸
    • 学会等名
      第22回日本歯科医学会総会
    • 発表場所
      大阪 インテックス大阪
    • 年月日
      20121110-20121111
  • [学会発表] 歯周病変部の歯石と歯肉縁下歯石の組織構造および組成の検討2012

    • 著者名/発表者名
      三島弘幸、大久保厚司、西野彰恭、笹川一郎, 青柳秀一、見明康雄
    • 学会等名
      第54回歯科基礎医学会学術大会
    • 発表場所
      奥羽大学
    • 年月日
      20120914-20120916
  • [学会発表] SEM-EDS、EDXによる象牙質、第二象牙質、セメント質および根尖周囲歯石の成分分析2012

    • 著者名/発表者名
      大久保厚司、辻本真規、藤永賢介、三島弘幸、松島潔、河野善冶
    • 学会等名
      第33回日本歯内療法学会学術大会
    • 発表場所
      東京 日経ホール
    • 年月日
      20120616-20120617
  • [学会発表] 海底から発見された頭蓋骨の経年経過推定を貝殻の成長線から検討した例2012

    • 著者名/発表者名
      三島弘幸、井上昌子、見明康雄、國藤邦彦
    • 学会等名
      化石研究会第30回総会・学術大会
    • 発表場所
      札幌 北海道
    • 年月日
      20120609-20120610
  • [学会発表] アパタイト結晶形成機構の進化と硬組織に与えた弱点2012

    • 著者名/発表者名
      筧光夫、寒河江登志朗、三島弘幸、吉川正芳
    • 学会等名
      化石研究会第30回総会・学術大会
    • 発表場所
      札幌 北海道
    • 年月日
      20120609-20120610
  • [学会発表] Combined effects of cadimium exposure and estrogen depletion responsible for developing Itai-itai disease in postmenopausal women2012

    • 著者名/発表者名
      Kakei M, Sakae T, Mishima H, Yoshikawa M
    • 学会等名
      ECTS 2012 39 th Anunual Congress
    • 発表場所
      Stockholm, Sweden
    • 年月日
      20120519-20120523
  • [学会発表] Euththenopteron foodi(カナダ産デボン紀)の歯と皮甲の組織構造と化学組成2012

    • 著者名/発表者名
      三島弘幸、筧光夫、見明康雄、笹川一郎
    • 学会等名
      日本解剖学会
    • 発表場所
      甲府 山梨大学甲府キャンパス
    • 年月日
      20120326-20120328
  • [学会発表] イタイイタイ病はカドミウム暴露とエストロゲン欠乏の相乗効果による石灰化不全に起因する2012

    • 著者名/発表者名
      筧光夫、吉川正芳、寒河江登志朗 、三島弘幸
    • 学会等名
      日本解剖学会
    • 発表場所
      甲府 山梨大学甲府キャンパス
    • 年月日
      20120326-20120328
  • [学会発表] デボン紀肉鰭類Euththenopteron foodiの硬組織の構造と化学組成2012

    • 著者名/発表者名
      三島弘幸、筧光夫、見明康雄、笹川一郎
    • 学会等名
      平成23年度高知大学海洋コア総合研究センター全国共同利用研究成果発表会
    • 発表場所
      高知 高知大学海洋コア総合研究センター
    • 年月日
      20120301-20120302
  • [学会発表] 魚類のウロコを用いた宇宙生物学的研究:新規メラトニン誘導体のウロコ及び骨疾患ラットの骨代謝に対する作用2012

    • 著者名/発表者名
      鈴木信雄、大森克徳、井尻憲一、北村敬一郎、根本鉄、清水宣明、笹山雄一、西内巧、染井正徳、池亀美華、三島弘幸ほか37名
    • 学会等名
      JSAS宇宙利用シンポジウム(第28回)
    • 発表場所
      東京 日本学術会議
    • 年月日
      20120123-20120124

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公開日: 2014-07-24  

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