研究課題/領域番号 |
23592728
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
宮崎 達也 東北大学, 歯学研究科(研究院), 大学院非常勤講師 (90538638)
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研究分担者 |
鈴木 治 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (60374948)
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キーワード | コンドロイチン硫酸 / 骨代謝 / インテグリン |
研究概要 |
骨基質には、decorinやbiglycanなどのプロテオグリカン(PG)が存在し、骨代謝を調節している。これまでに、PGの糖鎖であるグリコサミノグリカンのうち、多硫酸化構造を有するコンドロイチン硫酸(CS)が、マクロファージ株RAW264と同様にM-CSF依存性骨髄細胞の破骨細胞分化を抑制することを確認している。CS-Eの作用機序として、破骨細胞分化調節因子との相互作用が考えられたため、接着因子に着目しαvβ3 integrinとそのリガンド(vitronectin、osteoactivin)の関与について検討した。CS-E、heparinには、vitronectin、osteoactivin のみならず、そのレセプターであるαvβ3 integrinに対しても結合性が認められた。また、αvβ3 integrinとosteoactivinを予めCS-Eと反応させることで、両者の直接の結合が阻害された。なお、αvβ3 integrinとCS-Eの結合はDRGDSにより阻害されなかった。αvβ3 integrinを固層化してRAW264細胞上のintegrin/リガンドの結合を阻害すると、破骨細胞分化が抑制された。また、osteoactivin固層化による骨吸収促進活性をCS-Eは阻害した。以上の研究結果から、E構造を有するCSが前破骨細胞のαvβ3 integrinとosteoactivinの両者に結合し、integrin/osteoactivinの直接の結合を阻害することで破骨細胞分化を抑制している可能性が示唆された。骨芽細胞上には多硫酸化CSが存在し、integrin系を介して破骨細胞の分化を調節していると考えられた。なお、CS-EはRANKLやBMPとの結合性も示したことから、これらの分子とCS-Eを組み合わせて骨補填材としての可能性について検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
骨芽細胞と骨髄細胞あるいはRAW264細胞を用いて骨芽細胞/破骨細胞の共存培養系の構築に取りかかったが、まだ系の確立には至っていない。しかしながら、CS-Eによる破骨細胞分化抑制の作用機序として、integrin/osteoactivinの関与を明らかにしたことや、表面プラズモン共鳴法などの高価な解析装置を使うことのない標識CS-Eを用いた親和性の測定系については、種々のタンパク質において評価可能であり、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
integrin/osteoactivin を介したCS-Eの破骨細胞分化抑制作用について、integrinレセプターのシグナル伝達系についても確認する。また、骨芽細胞や骨芽細胞/破骨細胞(共存培養系)におけるintegrin/osteoactivinを介した作用についても明らかにし、骨補填材としての可能性について検討する。なお、osteoactivinは高価な試薬であるため、integrin リガンドのvitronectinやfibronectinなどによる代替についても試みる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度、骨芽細胞/破骨細胞の共存培養系の確立が遅れたため、次年度に研究費を使用して実施する。なお、次年度の研究計画に変更はないため、計画通り実施する予定である。
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