研究課題/領域番号 |
23592729
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
穐山 雅子 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 特任助教 (30436646)
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研究分担者 |
中浜 健一 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (60281515)
森田 育男 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (60100129)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ドコサヘキサエン酸 / 破骨細胞 / 分化 |
研究概要 |
マウス骨髄由来単核球(BMM)をRANKL(Receptor Activator for Nuclear Factor κ B Ligand)またはM-CSF(Macrophage-Colony Stimulating Factor) + RANKL 存在下で培養し、破骨細胞への分化を誘導するin vitro 単培養系を用い、破骨細胞分化のどの段階で分化を抑制しているか遺伝子発現を指標に検討した。これまでの検討結果からEPA では巨大かつ核数の多い破骨細胞が形成されているが、DHA では大きさ及び核数ともに小さい破骨細胞しか観察されないこと、多核化していない細胞もTRAP 陽性となっていることが示されており、PUFAはfusion 過程に作用している可能性が高いと考えられた。DHAの作用時間を変化させて検討した結果、sRANKL添加後TRAP陽性となる過程(sRANKL添加直後~2日後)のみDHAを添加した場合には破骨細胞形成は抑制されず、その後のfusion過程でDHAが存在することで破骨細胞形成が抑制されることが明らかとなった。DHAがfusion過程にどのような作用を及ぼすのか、破骨細胞分化に伴う遺伝子発現変化から検討することを試みた。マイクロアレイを用いてsRANKL無処置、sRANKL無処置およびDHA処置、sRANKL処置、sRANKLおよびDHA処置の4群の遺伝子発現を比較した。sRANKLおよびDHA処置3日後にRNAを抽出し、種々の遺伝子の中から、sRANKL処置によって発現が増加し、かつ、DHA処置によって増加が抑制される遺伝子を探索した。今後、これら遺伝子の破骨細胞分化に対する作用について検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DHAが作用する破骨細胞形成抑制作用に関連する受容体については明らかになっていないが、薬物処理時間を変化させた実験からDHAが細胞融合過程に対して作用することを確認した。また、この結果を元に、遺伝子発現についてマイクロアレイを用いた解析を行った。解析結果を元に、標的と考えられる遺伝子についてリアルタイムPCRなどにより解析を開始しており、おおむね順調に進捗しているものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
マイクロアレイの解析を進め、DHAの作用を破骨細胞分化に伴う遺伝子発現変化から検討する(中浜・穐山)。DHAは細胞融合過程に作用していると考えられる。我々の研究では、接着分子の1つであるMac-1が破骨細胞分化に重要な役割を果たすことが分かっていたが、Mac-1結合する分子であるICAM-2が重要な役割を果たしていることを示した。DHAがこのような接着分子の発現にどのように影響するかリアルタイムPCR及びウエスタン・ブロッティング法を用いて検討する(中浜・穐山)。破骨細胞の分化にはRANK-TRAF6 シグナルによるnuclear factor of activated T cell c1(NFATc1)の活性化が必須である(Gohda J. et al.,EMBO J.,24, 790-299, 2005)。 しかし、RANK-TRAF6 シグナルの特異的増幅機構についてはまだ不明な点が多い。DHAの作用とシグナル伝達経路の関与について検討する(森田・中浜・穐山) 。新たに発見された細胞内シグナル分子について、薬物の治療標的になりうるかを検討する。必須脂肪酸として様々な脂肪酸が摂取されており、これら脂肪酸との間に相互作用を示すと考えられる。特に同じn=3系PURAであるDHA とEPAとは一般的には同じような作用をもつと考えられているが、同じ標的分子に競合的、あるいは非競合的に作用する可能性がある。相加、相乗、拮抗作用の数学的モデルを利用し、モデルへの当てはまりから、in vitro の試験系でどのようなパターンで相互作用しているのかを確認する(中浜・穐山)。
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次年度の研究費の使用計画 |
前述の推進方策に基づいた実験を行うため、主に下記の目的で研究費を使用する。マウスから採取したBMMを用いた培養実験を行うための動物、培地等試薬、培養器具等を購入する。DHAが細胞融合過程において接着分子の発現にどのように影響するかリアルタイムPCR、ウエスタン・ブロッティング法を用いて解析するための試薬、抗体、等を購入する。 実験結果について学会等で発表するための出張旅費を使用する。
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