研究概要 |
我々はn-3系高度不飽和脂肪酸(PUFA)の中でドコサヘキサエン酸(DHA)が強い破骨細胞分化抑制作用を持つ一方、同じn-3系PUFAであるEPAでは逆に破骨細胞分化が促進されることを見出した(Prostaglandins Other Lipid Mediat., 2010)。 本研究では、DHAの破骨細胞分化抑制作用機序を明らかにすることにより、新たな骨疾患の治療目的を提示することを目標とした。 マウスの大腿骨および脛骨から採取した骨髄由来単核球(BMMs)を用い、in vitroで破骨細胞形成作用を検討した。すなわち、可溶性receptor activator of NF-kB ligand及びmacrophage colony stimulating factor存在下でBMMを培養し破骨細胞分化を誘導した。DHAの作用時期について検討した結果、DHAは破骨細胞形成の後期に存在することが必須であることが明らかとなり、破骨細胞融合の過程で作用していると考えられた。 そこで、その時点でのBMMsの遺伝子発現をマイクロアレイにより網羅的に解析し、DHAおよびEPAによる遺伝子発現の変動について比較した。解析の結果から、細胞運動性、細胞接着、細胞形態形成、細胞間シグナル伝達および脂質代謝過程に関連する遺伝子群が影響を受けていることが示された。また、定量的PCRの結果から破骨細胞における細胞融合過程に不可欠な遺伝子であるDC-STAMPの他、Siglec-15、Tspan7、およびMst1rなどの遺伝子についてEPAでは阻害されないがDHAにより阻害されることが確認された。
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