研究課題
カプサイシン併用により感覚神経だけを麻酔できるQX-314 は、次世代の麻酔薬として注目されている。しかし、神経損傷を起因とする神経因性疼痛に、QX-314 の麻酔効果が発現するかは不明である。なぜなら、神経損傷後の神経因性疼痛は、カプサイシン受容体(TRPV1)を多く発現するC線維の減少を伴う、神経線維の異常な再生に起因する可能性があるからである。本研究は、神経損傷後の神経因性疼痛の病態を詳細に分類し、1)神経損傷後の神経因性疼痛の病態とQX-314 の麻酔効果、2)神経損傷後の神経因性疼痛の病態と受傷部再生神経線維におけるTRPV1 発現状態の関連性、3)QX-314 の総合的な麻酔効果について明らかにすることを目的としている。ラット下歯槽神経を切断し、切断面をあわせて下顎管に戻すことにより、神経因性疼痛モデルラットを作製した。神経切断により神経因性疼痛を発症したラット群(疼痛持続期間により、さらに分類)と疼痛を発症しなかったラット群に分類し、カプサイシンを併用したQX-314をラットおとがい部に注射し、麻酔効果の発現について検討した。さらに、病態により分類した各群のラットおとがい部皮下に逆行性蛍光トレーサーFG 注射した後、三叉神経節を取り出し、TRPV1 および有髄神経線維マーカーであるNF200 の免疫染色を行い、神経再生を示すFG(+)、TRPV1 チャネルの存在を示すTRPV1(+)および有髄神経線維(A 線維)を示すNF200(+)の重なり(マージ)の程度を評価した。これらの結果から、神経切断後、神経障害性疼痛を発症した場合、QX-314の作用発現に関与するTRPV1チャネルを発現するC線維数の減少が示された。つまり、臨床の場面で、神経に大きなダメージを与えてしまった後に発症した神経因性疼痛には、QX-314の麻酔作用の発現は少ないことが予想される。
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