研究課題
マウス筋芽細胞株C2C12細胞に炎症性シグナルとしてTNFαを作用させると、CCNファミリーの古典メンバーの中でCCN2のみがTNFαによって発現誘導されることを明らかにした。またCCN2がBMP2と結合し、その作用を修飾することが報告されており、これらのことから、我々はCCNファミリー分子群の中でCCN2が筋肉内異所性骨化に深く関与していると考えた。平成23年度ではC2C12細胞を用いて、CCN2の筋芽細胞に対する作用を明らかにした。これらの結果をもとに平成24年度では実際のマウスの筋組織から筋芽細胞を単離し、CCN2における作用を解析すると共にCCN2欠損マウス由来の筋芽細胞の細胞増殖や筋管細胞への分化に与える影響及び石灰化に対する影響を解析した。(1) マウスの菲腹筋から単離した筋芽細胞にTNFα刺激を加えると、C2C12細胞と同様にCCN2の産生量の増加が見られた。(2) マウス筋芽細胞にCCN2を添加すると、筋管細胞のマーカーであるMyosin heavy chain (MHC)の遺伝子発現量が低下した。(3) CCN2欠損マウスから単離した筋芽細胞による筋管形成能は野生型マウス由来の細胞よりも亢進した。しかし、MyoDやMHCなどの筋管細胞のマーカー遺伝子の発現量は逆に低下した。(4) BMP2によるCCN2欠損マウス由来筋芽細胞のアルカリホスファターゼ(ALP)染色のレベルは野生型マウス由来筋芽細胞に比べて上昇した。(5) CCN2欠損マウス由来筋芽細胞において骨芽細胞のマーカー分子であるALP及びOsterixの遺伝子発現レベルは野生型マウス由来筋芽細胞に比べて上昇した。これらの結果からCCN2は筋芽細胞において調和のとれた増殖及び分化に必要であるだけでなく、異所性骨化の抑制にも関わっていることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
平成24年度の研究目的はC2C12細胞のような細胞株を用いたCCN2の作用を検討するのではなく、実際のマウスの筋組織から単離した筋芽細胞によるCCN2の作用を調べることであるから、この点に関しては順調に進展している。また、CCN2欠損マウスからも筋芽細胞を単離し、CCN2欠損マウス由来筋芽細胞による筋管形成やBMP2刺激による骨芽細胞様変化に対する影響を解析できた点は当初計画よりも進展しているのかもしれない。しかしながら、研究計画に含まれている動物実験に関しては遅れているため、総合的に判断して本課題は概ね順調に進展していると考えている。
平成23年度はC2C12細胞におけるCCN2の作用を中心に行い、平成24年度はマウス筋芽細胞における解析を中心に行った。今後はこれらの結果をもとに動物実験を中心としたCCN2の異所性骨化における役割を解析していく必要があるが、この時点でこれまでの成果をまとめることも必要である。よって、今後はこれまでの成果をまとめつつ動物実験を行っていく予定である。
当初計画では平成24年度に市販のマトリゲル内にBMP2、CCN2あるいはその両者を混合した後、マウス腹部皮下に注入し、異所性骨化がどのように進行していくかという動物実験を計画していた。この実験はマウス下腿に人為的に異所性骨化を引き起こさせる動物実験の前段階としての位置付けの動物実験と当初考えていたが、in vitroの筋芽細胞におけるCCN2の作用が明らかとなった時点で、この動物実験を行っても、CCN2の筋肉内異所性骨化における役割を解明するのに十分な成果が得られないと考えた。そのため、当初計画を変更したことで当該研究費が生じたが、平成25年度には実際の筋肉内に異所性骨化を引き起こさせる実験に着手する予定であるため、平成25年度に請求する研究費と当該研究費を合わせて研究計画を実施する予定である。
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