研究課題/領域番号 |
23592733
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
十川 千春 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (10253022)
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研究分担者 |
北山 滋雄 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (80177873)
十川 紀夫 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (30236153)
森田 克也 広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (10116684)
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キーワード | 神経因性疼痛 / 抗うつ薬 / トランスポーター / モノアミン |
研究概要 |
神経障害を伴う難治性慢性疼痛の治療薬として抗うつ薬は第一選択薬とされている。本研究では、慢性疼痛に対する有効な抗うつ薬選択のためのエビデンスを得るため、各種疼痛モデル動物病態時における抗うつ薬の標的分子の発現変化あるいは機能変化と、抗うつ薬の鎮痛効果との相関を明らかにすることを目的とする。H23年度から引き続き、抗うつ薬の分子標的としてモノアミントランスポーター(MAT)の発現変化に焦点を当てて解析を行っているが、H24年度は昨年度までの不完全神経損傷モデルである坐骨神経部分結紮モデルに加え、神経因性疼痛モデルとして、疾患特異的な神経因性疼痛モデルである、ストレプトゾトシン誘発糖尿病性ニューロパチーモデル、慢性炎症により発症する神経因性疼痛モデルである完全フロインドアジュバンド誘発炎症モデルについてさらに解析を行った。 いずれのモデルマウスにおいても、対照群および疼痛反応発症群それぞれのマウスから脳幹を摘出し、全RNAを精製後DNase処理したRNAサンプルを調製した。MATのうち、ノルアドレナリントランスポーター(NET)mRNA発現量をNET特異的プライマーを作成し、リアルタイムPCR法にて定量的に解析した。対照群と比較した結果、糖尿病性ニューロパチー群、坐骨神経部分結紮群においては、脳幹NETmRNAの発現量は対照群と差がなかったが、完全フロインドアジュバンド誘発炎症群においては、対照群と比較してNETmRNA発現量の有意な減少がみられた。慢性炎症時に起こっている中枢神経系の可塑的変化がNET発現の低下を引き起こし、このNET発現低下が、下行性抑制路におけるNA神経の賦活化を起こしている可能性があり、抗うつ薬による疼痛制御に大きく影響すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までの坐骨神経部分結紮モデルに加え、疾患特異的な神経因性疼痛モデルである、糖尿病性ニューロパチーモデル。慢性炎症モデルについてさらに解析を行い、モノアミントランスポーターのうち、ノルアドレナリントランスポーターのみではあるが、リアルタイムPCRにて定量的に解析し、結果が得られているため、達成度は概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、難治性慢性疼痛に対して用いられる抗うつ薬の標的である下行性抑制系神経におけるMAT(NET、ドパミントランスポーター(DAT)、セロトニントランスポーター(SERT))の発現に焦点をあて、病態時におけるその発現変動を明らかにする。そのために、各種疼痛モデル動物を駆使して、MAT発現変化とその機序を解明し、抗うつ薬の有効性との関係を明らかにする。また、H23年度実績により、中枢抑制性神経系であるGABA神経の関与も考慮に入れる必要性が示唆されたため、MATの他にGABAトランスポーター(GAT)各サブタイプ(GAT1、 GAT3、 ベタイントランスポーター)についても、MATと並行して解析を行う。 坐骨神経部分結紮モデル以外として、H24年度から、疾患特異的な神経因性疼痛モデルである、ストレプトゾトシン誘発糖尿病性ニューロパチーモデル、慢性炎症により発症する神経因性疼痛モデルである完全フロインドアジュバンド誘発炎症モデルについて解析を行っているが、各モデル動物の疼痛反応発症後の時間経過ごとに、アロディニアの強度と閾値、痛覚過敏反応の発現、自発痛様行動を観察する。また交感神経依存性とモルヒネ感受性についても今後評価して行く予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度に引き続き、疼痛モデル動物の作製と行動解析、およびMAT、GAT発現変動の解析を行う。H24年度はNET発現のみの解析となり、他のDAT、SERTについての解析および、GATサブタイプについての解析が十分行えなかったため、H25年度はそれらについて重点的に解析を行うため、次年度使用額として、289,512円を計上した。 GATおよびMAT発現解析および機能解析は、それぞれの特異的プライマーを作製し、前述の各疼痛モデル動物における疼痛発症後のmRNA発現量をリアルタイムPCR法にて定量的に解析する。 また、疼痛発症後経時的なトランスポーター基質輸送活性の変化を、シナプトソームを用い、[3H] 標識Substrate Uptake Assayおよび [3H]標識Ligand Binding Assayにより、トランスポーターと基質輸送能と親和性を求め、機能解析を行う。 さらに、各疼痛モデルにおける抗うつ薬およびトランスポーター特異的阻害薬の鎮痛効果とトランスポーター発現変化との相関を検討する。薬物としては、三環系抗うつ薬の他SSRIやSNRIおよびGAT特異的阻害薬を用いる。
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