平成25年度は継続研究中のSp6による鉄を含む代謝変動の解析の為に必要なSp6遺伝子tet誘導系の作製に挑戦した。既に樹立していたTet onベクター導入安定的発現株とTet offベクター導入安定的発現株のそれぞれについて、pTRE-Sp6ベクターをリポフェクション法で導入し、G418で薬剤選択によりTet on-Sp6を4系統(計6クローン)、Tet-off-Sp6を2系統(計4クローン)樹立した。細胞増殖の安定性からTet-on-Sp6の4クローンを選抜し、Sp6遺伝子発現誘導・増強能をRT-PCRにて検討した。その結果、いずれもコントロールと同程度のmRNA発現が認められるものの、ドキシサイクリンによる発現増強を認めるものはなかった。そこで、当初予定していたSp6誘導または増強による代謝系への影響を検討する系の構築に代わる方法として,「Sp6によって特異的に誘導される遺伝子」の中で、細胞内分子の細胞内輸送に関連する標的遺伝子Rock1に着目して,Sp6による発現調節を検討した。その結果,Sp6はRock1遺伝子プロモーターの活性増強作用を有することを見出した。その際, Sp6と同じDNA結合部位を有すると言われるSp転写因子ファミリーのSp1はRock1遺伝子プロモーターに対して,影響を与えていないことを見出し,Sp6は歯原性上皮細胞特異的な働きをしていることを見出した。Rock1タンパク質は遺伝子発現,細胞内輸送,細胞形態等において機能しており,Sp6の発現とリンクすることから、鉄代謝に関わるフェリチン等の細胞内輸送を介した鉄代謝への関与が示唆された。今後は今回得られた知見をもとに、Sp6タンパク質によるRock1分子を介した鉄代謝への役割を明らかにしたいと考えている。
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