研究課題/領域番号 |
23592745
|
研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
根津 顕弘 北海道医療大学, 歯学部, 講師 (00305913)
|
研究分担者 |
谷村 明彦 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (70217149)
森田 貴雄 北海道医療大学, 歯学部, 講師 (20326549)
|
キーワード | カルシウム応答 / 唾液腺 / in vivoイメージング / 唾液分泌 |
研究概要 |
本研究は、生きた動物において唾液腺のカルシウム(Ca2+)応答がどのように変化し、唾液分泌に関わるのかを明らかにすることを目的とする。本目的を達成するため、本年度は以下の実験を行った。超高感度Ca2+センサー発現ウイルスベクターを用いてCa2+センサーを顎下腺へ導入した。この方法によって導入されたCa2+センサーは主に腺房細胞に発現していた。Ca2+センサーを発現させたラットにムスカリン受容体作動薬やアドレナリン受容体作動薬を腹腔内あるいは静脈内投与すると顎下腺に有意なCa2+上昇が観察され、これらのCa2+応答は受容体拮抗薬により完全に抑制された。刺激薬によって惹起されたCa2+応答の大きさや変化のパターンを比較すると、薬物ごとに上昇率や持続時間などに大きな違いがあることが明らかとなった。さらに、レーザースペックル血流計を用いて薬物投与による顎下腺の血流動態の同時イメージングを行ったところ、刺激薬によって大きく血流が増減することが明らかとなり、その持続時間にも大きな違いが観察された。この結果は、唾液分泌が、細胞内のCa2+応答だけでなく、血流量変化によっても大きく影響させている可能性を示す直接的な証拠である。 最終年度である平成25年度は、この方法を用いて様々な薬物刺激に加え、舌神経刺激反射による顎下腺のCa2+応答についてさらに調べる。さらに唾液分泌量のリアルタイム測定と血流動態のイメージングを同時に行い、唾液分泌に関わる細胞内Ca2+応答と血流、さらに神経系のフィードバックなどの関係を明らかにする。また顎下腺のCa2+応答と唾液分泌に関与するタンパク質を解析するためのウイルスベクターを導入し、唾液分泌との関連を検討する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高感度Ca2+センサーを用いた方法により、ラット顎下腺のin vivo Ca2+イメージング方法を確立した。この手法により、従来の蛍光指示薬(fura-2)では捉えることの出来なかった小さなCa2+変化の検出が可能となり、唾液分泌刺激薬の腹腔内や静脈内投与により顎下腺で起こるCa2+応答の可視化に加え、同時に顎下腺の血流動態をレーザースペックルイメージングでの可視化に成功した。さらに予備実験ではあるが、超小型圧力センサーを用いることで秒単位での微量な唾液分泌量変化を捉えることに成功した。これらの実験から、ムスカリン受容体作動薬のアセチルコリン、ピロカルピンあるいはベタネコールの刺激が、それぞれ異なったCa2+応答や血流動態変化を起こし、これらの違いが唾液分泌量やその変動パターンに大きく影響している可能性が示された。これは同じ受容体刺激薬であっても薬物ごとに作用様式が異なることを示す非常に興味深い結果である。これらの結果は、唾液分泌における細胞内セカンドメッセンジャー、血流動態および唾液分泌を直接同時に解析することによって得られるもので、生体内における唾液分泌機構の解明への重要な結果を得ることが出来た。平成24年度では予定した研究計画を達成することは出来なかったが、イメージングによるCa2+応答と血流動態の解析により生体内おける唾液分泌機構の解明のための予想以上の成果を上げることが出来た。今後はこれらイメージングと唾液分泌の同時測定実験に加え、唾液分泌に関係するタンパク質に関する研究を推し進める予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度で確立したin vivoでのCa2+応答と血流動態のイメージングに唾液分泌量変化との同時測定を加える実験を推し進める予定である。予備実験で既に適切な条件設定が決まっており、Ca2+応答、血流動態および唾液分泌量変化に関する実験は予定通り遂行できるものと考えられる。また薬物刺激だけでなく、舌神経反射や自律神経系切除などを行い、唾液分泌と神経系の制御に関する実験を行う予定である。さらにこれらの実験に加え、平成25年度は唾液分泌に関係するタンパク質に関する実験を遂行する。Ca2+動態関連分子であるstim1発現ウイルスベクターは既に作成済みであり、他のタンパク質発現あるいはノックダウン用のウイルスベクターの作成とそれらを用いた実験を進めていく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、試薬、プラスチック製品等の消耗品として使用する。また今年度は1~2回の学会での発表を予定しており、研究費はこれらの学会参加の旅費等としても使用する。
|