研究概要 |
本研究課題では口腔レンサ球菌の自己溶菌酵素(autolysin)をコードする遺伝子を同定することを目的としている。 1. autolysin遺伝子の同定 ミュータンスレンサ球菌の血清型bについてautolysin遺伝子情報が未解明であったので、縮重プライマーを用いたPCR法で検討したが、グリコシドヒドロラーゼに相同性を示す遺伝子を同定することはできなかった。近年、Streptococcus ratti FA1株のゲノム情報が公開されたので、その情報をもとに研究室保有のStreptococcus ratti BHT株で遺伝子特異的プライマーでPCRを行ったところ、PCR産物が得られた。この塩基配列を決定し、autolysinをコードするatlB遺伝子を同定することができた(GenBank AB820804)。これに加えて、Streptococcus mutans LM7株、OMZ 175株のautolysinをコードするatlA遺伝子とその周辺域の塩基配列を同定した(GenBank AB930283, AB930284)。 2.溶菌選択性の評価 菌体懸濁したポリアクリルアミドゲルを調製し、ザイモグラフィー法で評価した。S. mutans, Streptococcus sobrinus, Streptococcus downei, Streptococcus criceti由来の組換えタンパク質AtlAは宿主に加えてそれぞれの菌体を溶菌することがバンドとして観察できた。また、Streptococcus oralis ATCC 10557株を用いたゲルについては、AtlAによる溶菌したバンドを確認できなかった。この溶菌阻害は齲蝕原性細菌の自己溶菌酵素を標的とした阻害剤開発の基礎となるので、今後阻害機構を解明する必要がある。
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