研究課題/領域番号 |
23592748
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
上條 竜太郎 昭和大学, 歯学部, 教授 (70233939)
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研究分担者 |
片桐 岳信 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (80245802)
宮本 洋一 昭和大学, 歯学部, 准教授 (20295132)
山田 篤 昭和大学, 歯学部, 講師 (50407558)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 骨芽細胞 / 細胞内pH / 細胞分化 / carbonic anhydrase / MCT-1 |
研究概要 |
細胞は、種々のpH調節タンパク質を用いてpHの恒常性を維持している。本研究の目的は、軟骨細胞や骨芽細胞などの硬組織形成細胞の分化におけるpH調節タンパク質の役割を解明することである。特に、炭酸脱水酵素(CA)とモノカルボン酸輸送体(MCT)の硬組織構成細胞分化における役割を解析することとした。本年度は、軟骨芽細胞株であるATDC5細胞の分化誘導系および前骨芽細胞株MC3T3-E1細胞の分化誘導系を用いて、種々の分化段階におけるCAサブタイプとMCTサブタイプの発現を解析した。ATDC5細胞を骨形成因子(BMP)-2で刺激し、分化を誘導すると未分化ATDC5細胞が強く発現していたCA5bの発現が低下したのに対して、CA9の発現は一過性に上昇し、再び低下した。また、MCT-1、-4、-10、-13が未分化から分化したATDC5細胞で発現しており、MCT-2、-14は分化により発現が上昇した。これに対して、MCT-8は分化により発現が低下した。CA、MCT以外のpH調節タンパク質としては、SLC26A6およびNa-H exchangerの発現が分化により誘導された。MC3T3-E1細胞をBMP-2刺激することで、骨芽細胞様の分化を誘導したところ、MCT-1、-9、-14が分化程度に関わらず発現していた。また、分化によりSLC26A6、Na-H exchanger、H-ATPaseの発現が誘導された。これらのpH調節タンパク質の1つ、初代培養軟骨細胞にCA9 siRNAを導入したところ、肥大化マーカーであるCol10a1遺伝子の発現が強く誘導されることが明らかとなった。以上よりCA9は軟骨細胞の肥大化抑制因子の可能性が考えられた。また、MCT-1 siRNAの初代培養骨芽細胞への導入により骨芽細胞分化マーカーの発現が低下したことから、MCT-1は分化調節因子であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
軟骨細胞の肥大化分化がCA9によって制御されることを発見したことは大きな進展で、現在、論文を作成中である。また、MCT-1は細胞のpHのみならず、エネルギー代謝の重要な調節因子である。エネルギー代謝調節、pH調節の観点から骨芽細胞分化を解析することで、メタボリック・シンドロームと骨代謝の関係に関する新しい解釈が可能になる可能性が考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
(1) CA9の軟骨細胞分化制御メカニズムを明らかにする。特に、細胞内外のpHの変化、細胞内シグナル伝達の変化の観点から研究する。(2) MCT-1の骨芽細胞分化制御メカニズムを明らかにする。特に、BMPの下流のSmad経路の変化、エネルギー代謝の変化とその分化への影響を解析する。(3) 軟骨細胞分化あるいは骨芽細胞分化において発現に変化が認められたSLC26A6、Na-H-exchanger、H-ATPaseの遺伝子発現をATDC5細胞、MC3T3-E1細胞で抑制することで、分化マーカーの発現にどのような変化が生じるかを明らかにする。変化が認められた場合は、そのメカニズムを解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.候補遺伝子の細胞分化に対する作用の検討:siRNA、リコンビナントタンパク質標品、上記で作製した発現ベクターと中和抗体を用いて、同定したCA、MCT サブタイプの軟骨細胞・骨芽細胞分化誘導活性に対する作用を検討する。2.同定したpH 調節タンパク質の細胞分化誘導機構の検討:上記で同定したCA ならびにMCT による軟骨細胞、骨芽細胞分化誘導機構を検討する。3.同定したpH 調節タンパク質の発現制御機構解析:上記で同定したCA ならびにMCT の発現に関与することがこれまでに報告されている転写因子について、その発現ベクターやdominant negative、siRNA等をATDC5 細胞、MC3T3E1細胞に導入し、その関与を解析する。4.同定したpH 調節タンパク質の細胞分化に対する影響を遺伝子改変マウスまたは器官培養系を用いて解析する。(1) 細胞分化との関連がin vitro で確認されたものについて、それらの遺伝子改変動物の入手が可能であれば、その骨格系の解析を行う。
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