研究課題
細胞は、種々のpH調節タンパク質を用いてpHの恒常性を維持している。本研究の目的は、軟骨細胞や骨芽細胞などの硬組織形成細胞の分化におけるpH調節タンパク質の役割を解明することである。本年度は、モノカルボン酸輸送体(MCT)の骨芽細胞分化における役割について解析した。MCTは形質膜に存在するH+依存性トランスポーターであり、乳酸やピルビン酸等の酸を膜輸送することで細胞内外のpHの調節に寄与していると考えられている。MCTファミリーは14種類のサブタイプで構成されているが、その中でもユビキタスに発現するMCT-1に注目し解析を行った。その結果の概要は以下の通りである。MCT-1はマウス頭蓋冠由来初代培養骨芽細胞および骨形成タンパク(BMP-2)で骨芽細胞様分化を誘導できる筋芽細胞株C2C12細胞の両者で豊富に発現していた。MCT-1の遺伝子発現を抑制するためにMct-1 siRNAを初代培養骨芽細胞およびC2C12細胞に導入したところ、BMP-2刺激によって出現するアルカリホスファターゼ(ALP)陽性細胞数が著しく減少した。また、Mct-1 siRNAを導入した細胞では、BMP-2刺激によって誘導されるALPのmRNA発現が強く抑制された。一方、他の骨芽細胞分化マーカー遺伝子の発現には有意な差を認めなかった。Mct-1 siRNAを導入したC2C12細胞では、BMP-2刺激後のSmad1/5/8のリン酸化と核移行が抑制された。さらに、培地中にMCT-1の主要な基質である乳酸を添加すると、BMP-2刺激後のC2C12細胞におけるALP陽性細胞数およびmRNA発現は乳酸の濃度依存的に増加した。以上の結果から、pH調節タンパク質であるMCT-1を介した乳酸の膜輸送はBMP-2依存性の骨芽細胞分化を正に制御することが明らかとなった。
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