研究課題/領域番号 |
23592750
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
井上 富雄 昭和大学, 歯学部, 教授 (70184760)
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研究分担者 |
中村 史朗 昭和大学, 歯学部, 助教 (60384187)
中山 希世美 昭和大学, 歯学部, 助教 (00433798)
望月 文子 昭和大学, 歯学部, 助教 (10453648)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 運動ニューロン / 樹状突起 / カルシウムイオン / 三叉神経 / 情報処理 / 2光子励起顕微鏡 |
研究概要 |
三叉神経運動ニューロンは極めて発達した樹状突起を持っているが、遠位樹状突起のシナプス入力であっても細胞体に伝達され情報処理がなされていると考えられ、樹状突起上に存在するカルシウムチャネルがシナプス後電位を増幅し、複雑な情報処理を行っている可能性が考えられる。そこで今年度は、三叉神経運動ニューロンに活動電位を誘発した際の樹状突起各部位のカルシウムイオン濃度変化を二光子励起顕微鏡で観察することによって、樹状突起におけるカルシウムイオン動態を解析し、樹状突起における電位変化の伝播様式を明らかにすることを目的とした。実験には生後5 日齢のWister 系ラットを用い前頭断脳幹スライス標本を作成し、脳幹標本の三叉神経運動ニューロンの細胞体からのパッチクランプ記録を行った。パッチ電極に蛍光カルシウム指示薬のOregon Green 488 BAPTA-1を封入し、細胞内カルシウム濃度の測定に用いると同時に、蛍光色素のAlexa 594も封入し樹状突起を可視化した。三叉神経運動ニューロンにパッチクランプ電極を介して細胞内パルス通電を行って活動電位を誘発し、樹状突起の各部位のカルシウムイオン濃度を二光子励起顕微鏡で観察した。細胞体に4 発の活動電位を誘発すると、蛍光強度変化率のピークは細胞体近傍部よりも中位の樹状突起の方が高くなった。さらに遠位へと移動してもピークの値は中位の樹状突起からわずかに増加するのみであった。また、蛍光強度変化の潜時は樹状突起のそれぞれの部位で差はなかった。以上の結果から、細胞体だけでなく遠位の樹状突起上においても活動電位発生時に脱分極が起こり、カルシウムイオンチャネルを介したカルシウムイオンの流入が起こっていることが明らかとなった。これらの三叉神経ニューロンの細胞体や樹状突起に見られるカルシウムイオンの流入が細胞の情報処理に関わっている可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、2光子励起顕微鏡を用いて樹状突起の刺激やカルシウム動態の記録をきわめて高い空間解像度で行い、三叉神経運動ニューロンの樹状突起におけるシナプス後電位の殿堂様式を調べて、樹状突起の情報処理メカニズムを明らかにすることを目的とした。「研究実績の概要」で記載した通り、三叉神経運動ニューロンにパッチクランプ電極を介して細胞内パルス通電を行って活動電位を誘発し、樹状突起の各部位のカルシウムイオン濃度を二光子励起顕微鏡で観察した。その結果、細胞体に4 発の活動電位を誘発すると、蛍光強度変化率のピークは細胞体近傍部よりも中位の樹状突起の方が高くなるが、さらに遠位へと移動してもピークの値は中位の樹状突起からわずかに増加するのみであった。また、蛍光強度変化の潜時は樹状突起のそれぞれの部位で差はないという実験結果を得ている。したがって、本研究課題はおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度以降は、23年度と同様の実験を進め、多くの例を解析して、細胞体との距離とカルシウム濃度変化との関係を解析する。また、カルシウム濃度変化を起こす脱分極がどのようなメカニズムで生じているか、すなわち電位依存性ナトリウムチャネルと電位依存性カルシウムチャネルのどちらが脱分極に関与しているかを、拮抗薬等を用いて調べる。また、三叉神経上核や顔面神経核背側の網様体から三叉神経運動ニューロンに入力があることを申請者らはすでに報告しているが、それらの入力が個々の三叉神経運動ニューロンの樹状突起のどの位置に入力してどのような電位変化やカルシウム動態の変化につながっているかも調べていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究に必要な実験設備はほぼ揃っているので、研究費は主として、実験の遂行に必要な、カルシウム指示薬、ニューロンの可視化に必要な蛍光色素のAlexa 594、実験動物、電極材料および国内及び海外での成果発表旅費に使用する。
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