研究課題/領域番号 |
23592751
|
研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
渋川 義幸 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (30276969)
|
研究分担者 |
津村 麻記 東京歯科大学, 歯学部, 助手 (90582346)
佐藤 正樹 東京歯科大学, 歯学部, ポストドクトラル・フェロー (80598855)
ソブハン ウバイダス 東京歯科大学, 歯学部, ポストドクトラル・フェロー (90598856)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 歯学 / シグナル伝達 / 神経科学 |
研究概要 |
象牙芽細胞は,象牙質を形成する「象牙質形成細胞」である.象牙芽細胞は,長い細胞突起を象牙質中の象牙細管に入れている.一方,露出した象牙質表面への機械的・浸透圧・化学的・温度刺激は,象牙細管内溶液の移動を起こし,象牙質における痛み(象牙質痛)を誘発することが示されている.しかしながら,象牙細管内溶液の移動が,直接的に象牙質に分布する歯髄ニューロンを活性化するのか?あるいは,象牙芽細胞が象牙細管内溶液の移動を検知することで,その感覚情報を歯髄ニューロンへ伝達するのか?については緒論がある. 本申請研究者らは,過去に交付を受けた科学研究費において象牙芽細胞が,温度・機械・浸透圧刺激を感受し受容する一群の分子センサーである温度・機械・浸透圧感受性transient receptor potential (TRP) チャネルファミリーを発現する事を報告してきた.これらの結果は,露出象牙質表面への刺激に伴う象牙細管内溶液移動が,TRPチャネルファミリーを活性化させ,その結果,象牙芽細胞と接続する歯髄Aδニューロンへ,シナプス連絡を介する感覚情報の伝達が行われることを示唆するものである.しかし,残念ながら,象牙芽細胞と神経終末間でのシナプス連絡の直接的証拠はない. そこで本申請研究では,新規ATP輸送タンパク質であるパネキシン(Panx)に着目した.平成23年度には,象牙芽細胞に刺激を加えると,本細胞膜に発現するPanxから放出される神経伝達物質としてのATPが,歯髄ニューロンとシナプス連絡を確立する事を明らかにし,象牙芽細胞が感覚受容細胞である直接証拠を得た.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請研究の目的である,1)象牙芽細胞-ニューロン間における新規ATP輸送タンパク質であるパネキシン(Panx)を介するATP放出とATP受容体(P2X)による細胞間シグナル,2)Panxを介する細胞内Ca2+による象牙芽細胞-象牙芽細胞間コミュニケーションについて,平成23年度に明らかにした.研究成果は,当初計画より十分に進展しているが,現在,誌上発表に向けて慎重な追実験を行っている.
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度には,【現在までの達成度】にも記載したように,慎重な追実験を行っていく予定である.加えて,本申請研究におけるもう一つの目的である,3)Panxから放出されたATPの象牙芽細胞膜代謝型ATP受容体(P2Y)によるオートレギュレーションについても検討する.また,象牙芽細胞のみからmRNAを回収するために,レーザーマイクロダイセクション法を応用し,RT-PCRにてこれらの機能タンパク質の同定をおこなう.免疫組織化学染色を用いた細胞膜機能タンパク質のサブファミリー同定と,局在の検討もあわせて行う予定である.
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度研究費は,実験の遂行に必要な物品費として活用するのみならず,成果の発表に向けた国内外旅費,また誌上成果発表のための英文校閲等の謝金として活用する予定である.
|