研究課題
本研究は,象牙芽細胞に発現する新規ATP輸送タンパク質であるパネキシン(Panx)に着目し,Panxから放出される神経伝達物質としてのATPが,歯髄ニューロンとのシナプス連絡を確立する事を明らかにし,象牙芽細胞が感覚受容細胞である直接証拠を得る事を目的とした.平成23年度には,象牙芽細胞に単一機械刺激を加えると,本細胞膜に発現するPanxから放出される神経伝達物質としてのATPが,歯髄ニューロンとシナプス連絡を確立する事を明らかにし,象牙芽細胞が感覚受容細胞である直接証拠を得た.また平成24年度には,象牙芽細胞への機械刺激が,細胞膜に存在するtransient receptor potential (TRP) channelsを活性化させ,その結果生じた細胞内カルシウムシグナルがPanxからのATP放出に必須である事を見いだした.平成25年度(最終年度)には,象牙芽細胞機械刺激で放出されるATPが,歯髄ニューロンのイオンチャネル型ATP受容体を活性化させ,ニューロンとの感覚信号伝達を確立する一方で,近接して位置する象牙芽細胞のATP受容体をも活性化する事を示した.加えて,象牙芽細胞への機械刺激は,グルタミン酸の放出も活性化し,近接する象牙芽細胞の代謝調節型グルタミン酸受容体およびNMDA型受容体の両者を活性化させた.以上の結果から,象牙芽細胞への機械刺激は,細胞膜 TRP チャネルサブファミリー群を活性化させ,PANXからATPを放出し,歯髄に分布する三叉神経節ニューロンとの感覚情報伝達を確率することが明らかになった.象牙芽細胞が感覚受容細胞として機能する事が示された.また象牙芽細胞同士におけるATP, グルタミン酸による細胞間コミュニケーションが,象牙質形成を駆動している可能性から,象牙質再生療法薬剤の創薬分子標的としての応用を期待している.
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