研究課題/領域番号 |
23592754
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
鈴木 崇弘 愛知学院大学, 歯学部, 准教授 (70298545)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | MMP-2 / bioluminescence / Gaussia luciferase / exocytosis / cell migration |
研究概要 |
我々は、生細胞の表面におけるタンパク質分子の生物発光イメージング法を独自に開発してきた。分泌経路で高い発光活性を示すGaussia luciferase (GLase)をレポーターとしてEM-CCDカメラで発光シグナルを検出する原理により、1)細胞表面において分泌または結合するタンパク質の特異的かつ定量的な可視化、2)単一生細胞における全表面の解析、3)タンパク質分泌動態の30分以上の連続的な画像取得が可能である。癌の浸潤転移において重要な役割を果たすMatrix metalloproteinase-2 (MMP-2)の分泌機構は未だ不明であることから、生物発光イメージング法による解析を進めている。本年度は、MMP-2のGLase融合タンパク質プローブを作出し、MMP-2分泌の動態・局在・頻度について解析した。HeLa細胞において、MMP-2のC末端にGLase(K17-D185)を融合させたタンパク質プローブ(MMP2-GLase)は、内因性および強制発現させた野生型MMP-2やMMP2-FLAGと同様に、プロ型で分泌され、正しくプロセシングされることを生化学的解析により確認した。発光イメージング解析により、開口分泌で細胞外に放出されるGLase発光シグナルは、0.03-0.5秒/フレームのビデオ画像として可視化された。単体のGLaseは細胞上方に向けて迅速に拡散されるのに対して、MMP2-GLaseは細胞基底側から徐々に拡散された。遊走HeLa細胞は、先導端ラッフル膜からの積極的なMMP-2分泌を示し、さらに構成性分泌における連続的な開口分泌機構の存在が示唆された。また、MMP-2が繰り返し開口分泌される部位と、分泌されたMMP-2が細胞表面に結合する部位は、基底側の特定箇所に形成され、両者の分布は異なることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MMP-2の分泌動態、分泌局在については、論文発表と学会発表を行い、新しい知見を示すことに成功しており、順調に研究を進めることができた。MMP-2の動態を解析するためのGLaseレポータータンパク質を作出する点においては、計画通りに適切なものを作出することができた。MMP-2分泌動態の解明という点については、構成性分泌における連続的な開口分泌という全く新しい予想以上の現象を捉えることができた。MMP-2の活性化関連タンパク質についても、レポータータンパク質の作出やイメージング動態の解析は、論文発表までには至っていないものの、順調に進捗している。細胞表面MMP-2の活性化状態と相互作用分子との関連性の解析については、可能性を示す予備的なデータを得て、解析に用いるための遺伝子工学的なツールを準備した段階であり、唯一少し遅れている事項となっている。以上を総合的に見て、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
ほぼ順調に進展してきており、基本的に今後も当初の計画に従い研究を進める。MMP-2のGLase融合レポータータンパク質を作出する過程において、GLaseタンパク質配列を工夫することで、MMP-2の分泌動態を細胞表面結合のMMP-2と区別して見やすくできることを新たに見いだした。この工夫は、MMP-2の分泌動態を解析することに加えて、MMP-2のような分泌されてから細胞表面に結合するタイプのタンパク質の分泌を可視化する方法論としても非常に重要であり、論文発表に向けた取り組みとして積極的に進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度研究費が生じた理由としては、MMP2-GLaseレポータータンパク質の作出と生化学解析、および発光イメージングによるMMP-2分泌動態と分泌局在の解析が予想以上に順調に進み、研究費が節約できた点が挙げられる。当該研究費については、下記の2点に積極的に使用する:1)新たな着眼点であるGLase配列を工夫したプローブを用いたMMP-2分泌動態解析。2)遅れ気味となっているMMP-2相互作用分子の解析。その他の点においては、ほぼ研究計画どおりに進捗しており、当初の研究計画にしたがって翌年度に請求する研究費を使用していく予定である。
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