研究課題/領域番号 |
23592754
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
鈴木 崇弘 愛知学院大学, 歯学部, 准教授 (70298545)
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キーワード | Bioluminescence imaging / MMP-2 / Gaussia luciferase / exocytosis / cell migration |
研究概要 |
前年度までに、癌の浸潤転移において重要な役割を果たすMatrix metalloproteinase-2 (MMP-2) の分泌動態を生物発光イメージング法により可視化し、MMP-2が繰り返し分泌される部位と、分泌されたMMP-2が細胞表面に結合する部位は、基底側の特定箇所に形成され、両者の分布は異なることを示唆した。 本年度は、MMP-2活性化関連タンパク質を解析した。MMP-2を活性化させる膜貫通型プロテアーゼMMP-14(MT1-MMP)については、Gaussia luciferase (GLase) の挿入はプロペプチドと酵素部位の間に行うことで、比較的高い発光活性が認められた。またリンカーとしての(GGGGS)n配列(n=1~3)については、MMP-2と同様に挿入の有無に関わらず発光活性に有意な変化を認めなかった。これによりGGGGS配列を持たないGLase融合MMP-14(MMP14-GLase)を作出した。また、MMP-2とMMP-14の結合に必要な分泌タンパク質TIMP-2に関してもGLase融合タンパク質を作出した(TIMP2-GLase)。MMP14-GLaseまたはTIMP2-GLaseを発現させたHeLa細胞において生物発光イメージングを行った結果、両者共に、MMP2-GLaseと同様、遊走細胞の先導端から分泌される様子が可視化された。また、野生型MMP-14とMMP2-GLaseを共発現させたHeLa細胞とMMP-14の発現量が高いHT1080細胞にMMP2-GLaseを発現させた場合、細胞表面に結合したMMP2-GLaseがほとんど観察されなかった。1分子のMMP-2を活性化するにはMMP-14が2分子必要とされており、細胞表面に結合したMMP2-GLaseが集積する微小領域の発光シグナルは、MMP-2活性化部位であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生物発光イメージング法による分泌型および細胞表面結合型MMP-2のリアルタイムの可視化について、GLase融合MMP-2レポータータンパク質の生化学的解析結果を含めて学会発表を行い、手法の将来的な発展性が高いとの評価を受けて優秀賞を得たことから、本研究成果を意義あるものとして公表することができた。MMP-2活性化関連タンパク質の解析については、成果発表にまでは至っていないもののMMP-14、TIMP-2の分泌動態と局在を可視化することに成功しており、本手法が多種のタンパク質に適用可能であることを実証できている。また、予備的なデータとして、ガラス面より数十マイクロメートル離れたコラーゲンゲル上にある細胞のMMP-2分泌を可視化できており、「三次元培養細胞の開口分泌イメージング」が実現可能な準備ができている。また、前年度MMP-2融合レポータータンパク質を作出する過程で見出した、分泌と細胞表面結合のタンパク質を区別し易くするGLaseを利用した生物発光イメージングについては、後少しで公表可能なレベルまで研究が進んでいる。また本年度以降の新たな発見として、生物発光イメージングと全反射蛍光イメージングによりMMP-2の開口分泌動態をより詳細に解析する手法が実現可能であることを見出し、本課題での重要性が極めて高いと判断したことから、最終年度での取り組む準備を順調に進めた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度、成果発表までに至っていないGLase変異体を利用した「分泌型と細胞表面結合型タンパク質を区別し易くするイメージング」と、本年度着想に至った「生物発光と全反射蛍光による開口分泌イメージング」は、本研究課題遂行過程における予想以上の実験結果から生じたアイディアであり、MMP-2の分泌動態を知るという本課題にとって極めて重要となる手法である上、さらなる革新的な生細胞観察手法に発展する可能性がある。これにより、最終年度ではこれらのイメージング法を新規手法として確立することを最優先に進め、MMP-2分泌動態の解析に適用し、その本質と制御機構を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、「生物発光と全反射蛍光による開口分泌イメージング」を実現するための試行錯誤、機器調整に相当の時間を費やし、最終年度にこれを推進するための準備として、「エバネッセント照明用投光管」を導入することに予算を大きく割いた。その一方で、MMP-2相互作用タンパク質の解析は、「BRETイメージング」が技術的には可能であったが、新規な分泌事象を捉えるまでに至らず、前者の新規イメージング法の開発に注力したため、全体として、予算が残る結果となった。 次年度は、1つの顕微鏡システムで生物発光と全反射蛍光観察を行うことが可能となるため、これを利用して積極的にMMP-2およびMMP-14、TIMP-2の分泌動態を解析する。従って主にイメージング用、細胞培養用プラスチック器具と試薬に研究費を当てる計画である。
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