研究課題/領域番号 |
23592756
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
大西 芳秋 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 主任研究員 (60233219)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 唾液 / 転写 / クロマチン / 生物時計 |
研究概要 |
本年度は、概日リズム機構により直接転写制御されうる遺伝子をクロマチンレベルで同定することを目的に研究を進めた。もっとも普遍的な概日リズム転写調節機構は、BMAL1-CLOCKヘテロダイマーによるE-boxを介する調節であり、HSG細胞においてもBmal1が概日リズム発現をしていることから、多くの遺伝子が本メカニズムにより転写調節されていると推察された。さらにBmal1の概日リズム転写はHSG細胞においてはRev-erbaにより調節されていることから、Rev-erbaによるRORE配列を介して概日リズム調節されている遺伝子も多く存在しているのではないかと予想された。そこでHSG細胞をdexamethasone刺激による同調後、HSG細胞内においてBMAL1-CLOCK複合体やRev-erbaにより転写調節されうるようなクロマチン構造変化を起こしている遺伝子をChIP on chip法により同定した。Bmal1とRev-erbαの発現リズムは反対位相であることより、Bmal1を標的とする場合はdexamethasone刺激36時間後、またRev-erbaを標的とする場合はdexamethasone刺激24時間後のクロマチンを用いて解析した。今回の実験の目的は概日リズム機構により直接転写制御されうる遺伝子の同定であるため、Myc-Bmal1やFlag-Rev-erbaをHSG細胞に導入し強制発現させた上でのChIP、さらに回収されたDNAはWhole genome amplificationを行うことにより、効率よく候補遺伝子の同定をおこなった。実験のpositive controlであるRev-erbaがきちんと抽出され、さらに336遺伝子が概日リズム機構により直接転写制御されうる遺伝子候補として抽出することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の主な研究目的は、HSG細胞内においてBMAL1-CLOCK複合体やRev-erbaにより転写調節されうるようなクロマチン構造変化を起こしている遺伝子をChIP on chip法により、概日リズム機構により直接転写制御されうる候補遺伝子の同定である。実験のpositive controlであるRev-erba (BMAL1/CLOCKとRev-erbaにより転写調節されている)は、遺伝子上への結合が認められただけではなく,結合ピーク時間もその機能に依存して12時間ずれて候補遺伝子の一つとして抽出されていた。よって今回のChIP on chipにより抽出されて遺伝子は概日リズム機構により直接転写制御されうる遺伝子である可能性が高いと考えられ、このような遺伝子が多数抽出されたことより、おおむね順調に研究が進行していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の主要な実験であるChIP on chipにおける試料調製において、ChIPのDNA調整においてWhole genome amplificationを行ったため、当初予定の細胞数よりも少なくて済んだため、多少の予算の節約が可能となった。しかしながら抽出された候補遺伝子数が当初予定よりも多いため今後の実験には当初予定よりも多くの研究費が必要となると考えられる。そこで次年度使用額は、この当初予定より多く必要となる経費に充当したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画自体の進行は、当初予定通り進行しているため基本的には次年度の研究計画自体に大きな変更は必要ないと考えている。ただし上記のごとくChIP on chipによる候補遺伝子数が当初予定よりも多くなったため、唾液腺における遺伝子発現を確認するRT-PCR等の実験に当初より多くの経費が必要となる。次年度使用額を補充することにより、次年度の研究計画予定通り遂行できると考えている。
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