研究概要 |
目的:口腔癌の潜在的頸部転移リンパ節の早期検出におけるCT灌流画像(CT perfusion, CTP)の有用性について検討を行った。 対象と方法:口腔癌6症例(舌3例、下顎歯肉1例、上顎歯肉1例、口底1例)に対し、 64列マルチスライスCTにより単純・造影CT撮影、CTP撮影の順で行った(本学歯学部倫理委員会承認番号23-R4-11-06)。研究期間は平成23年7月から平成26年2月までとした。CTP撮像はシネモードとし、管電圧を80kVpにて、造影剤40 mLを4 mL/secの速度で注入した。注入開始後5秒から50秒までの46秒間、1秒ごとに連続スキャンし画像データを収集した。画像解析は、ziostation2(ザイオソフト)を使用し、転移の疑われるリンパ節にROIを設定し、Single compartment 法では灌流速度SC Flowを、Deconvolution 法では血流量(BF)、血液量(BV)、平均通過時間(MTT)を算出した。また健側の同名リンパ節も同様に施行した。対象とした患側リンパ節は8個であり、このうち7個に病理組織学的に転移が認められた。 考察:6症例8個のリンパ節についてretrospectiveに検討した結果、SC Flow、BF、BV、MTTのいずれも症例によるバリエーションが大きく、その数値のみで転移の有無の判定に直接寄与することはなかった。しかし、健側の同名リンパ節を対照として患側/健側比を算出すると、病理組織学的転移陽性リンパ節7個のうち3個については、灌流速度が健側同名リンパ節よりも50%程度の著しい低下傾向を示していた。これらのリンパ節は、通常の造影CTでは健側リンパ節と同様に造影され転移と判定することは困難であった。 結論:短径10 mm以下の潜在的な頸部転移リンパ節の検出において、 CTPによる灌流の解析は、Single compartment 法を用いた患側/健側比の評価をすることにより、有用性が期待できると思われた。特に、灌流速度の著しい低下は新たな転移陽性の判断基準となりうる可能性があると考えられた。
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