研究課題
本研究は、口腔癌に対する強度変調放射線治療(IMRT)時に生じる放射線性口内炎の評価について、特殊なカメラとIDEAL法によるMRI画像を用いた客観的評価方法を確立し、その上で口腔内に装着する「放射線性口内炎軽減装置」を考案し、口腔粘膜の吸収線量を減少させ、患者の疼痛を軽減することにより放射線治療完遂率を高め、放射線治療による口腔癌の局所制御率の向上を図ろうとするものである。まず、放射線治療計画シミュレーションソフトウェアによる吸収線量の推定を行った。 本研究費で購入した放射線治療計画シミュレーション用ソフトウェアでは、実際のCTスキャンによる断面画像において自動的に骨や各種軟 部組織の分離ができるのみならず、仮想の構造物をCT画像に模擬的に設置することが可能であった。さらにその仮想の構造物の厚さ /原子番号/密度を任意に設定することが可能であった。 そこで、構造物として、レジン、シリコン系歯科用印象剤、鉛の実効原子番号と電子密度を入力し、厚さを、3 mmから20 mmまで変化 させ、下顎骨での吸収線量をシミュレートした。本年度は臨床応用した。倫理委員会の承認の後、患者各自から書面によるインフォームドコンセントを得た後、患者口腔内の歯列の印象を採得し、石膏模型を作成した。石膏模型上にて、上記基礎実験で得られた結果を基に、各自カスタムメイドの放射線性口内炎軽減装置を作成し、装着した。装着時の口腔粘膜における吸収線量を、皮膚面と同等と考え、皮膚面にて測定した。この結果、鉛をレジンで包埋した装置によれば、患側の皮膚面(粘膜面と同等と考える)の線量は70-74%に低減できることが判明した。これは、口腔粘膜炎の頻度を低め、患者の疼痛を軽減することにより放射線治療完遂率を高め、放射線治療による口腔癌の局所制御率の向上に寄与できるものと結論づけた。
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J Radiat Res.
巻: 55 ページ: 191-9
10.1093/jrr/rrt100