研究課題/領域番号 |
23592766
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
谷本 圭司 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (90335688)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | Hypoxia / HIF / DEC / DNA repair / Transcription / Cancer cell |
研究概要 |
能温存による口腔がん患者のQOL向上に向けて,より効果的で安全な治療法を開発すべく,転移や再発の芽となり得る低酸素下がん細胞の放射線や抗がん剤によるDNA損傷応答機構における転写因子HIF-1およびその下流の転写抑制因子DECの意義解明をめざす。さらには,HIF-DEC経路を分子標的とした治療法,治療増感法を開発するための解析基盤を構築する。特に本年度は,1)網羅的遺伝子発現解析により、低酸素下がん細胞にて、非常に多くのDNA損傷応答、修復関連遺伝子発現が低下することを明らかにした。2)低酸素下でのDNA修復関連遺伝子発現制御機構の解析を行い、HIF-1やDECの関与について詳細に示した。特に、DEC2の重要性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、1)DNA損傷応答機構にかかわる遺伝子および低酸素応答(誘導)遺伝子の発現変動について,様々ながん細胞株や正常細胞などを用いて,正常酸素分圧下(21% pO2)と低酸素分圧下(1-5% pO2)にて4-96時間培養し,microarrayおよびreal-time RT-PCR法にて比較検討する。2)上記培養条件下細胞株におけるDNA損傷応答機構にかかわる因子および低酸素応答(誘導)因子の発現変動について,western blotting法にて比較検討する。3)上記培養条件下細胞株の放射線(X線,γ線)照射,DNA障害性薬剤(Bleomycin,CDDP,CBDCA,CPT-11など)に対する感受性の変化をMTT法にて比較検討する。4)上記実験系をHIF1AおよびDEC1,DEC2特異的siRNA導入によりノックダウンして再検討する。5)DNA損傷応答機構にかかわる遺伝子のプロモーター領域をサブクローニングし,解析用ルシフェラーゼレポーターを構築する(既に構築済みも含む)。さらに,点変異,欠失変異体を解析目的に応じて作製する。6)上記プロモーターレポーターとHIF-1αやDECなどの発現プラスミドベクターと共遺伝子導入し,また,さらに様々な薬剤やsiRNAを処理し,プロモーター制御機構を明らかにする。ことを予定していたが、1)、2)、4)は概ね解析を行い、3)、5)、6)は実験を開始することができた。
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今後の研究の推進方策 |
1)上記実験を引き続き継続する。2)上記実験により特徴的な遺伝子,蛋白発現を示す細胞,特徴的な放射線や薬剤応答を示す細胞を選択し,比較実験に供する。3)2)細胞株を用いて,放射線(X線,γ線),DNA障害性薬剤(Bleomycin,CDDP,CBDCA,CPT-11など)処理後の低酸素環境下DNA損傷応答への影響を,DNA損傷認識,チェクポイント機構,そして修復またはオートファジーやアポトーシス誘導へのシグナルの変化を中心にwestern blottingやreal-time RT-PCR法などで比較検討し,その耐性化分子機構を探索する。4)上記実験にて見いだされたHIF-1やDEC応答配列を含むレポーターを,それぞれの機能レポーターとし,既存の抗がん剤,その他の医薬品,化合物,さらに,天然物質などからHIF-DEC経路の阻害物質スクリーニングを行う。5)上記HIF-DEC経路阻害物質の治療応用への可能性を,放射線照射,既存の抗がん剤,さらには分子標的薬などと様々な条件下にて(投与スケジュールのもと)組み合わせて,培養細胞および独自に開発した腫瘍自然発生をきたすHIF1A tgマウスなどを用いて検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度も本年度同様に上記実験遂行上必要な消耗品購入および情報収集、成果発表のための旅費を研究費より使用予定である。
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