研究課題/領域番号 |
23592774
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
犬童 寛子 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (00301391)
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研究分担者 |
富田 和男 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60347094)
馬嶋 秀行 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (60165701)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | オートファジー |
研究概要 |
我々はこれまで、ヒト神経芽細胞腫であるSK-N-SH細胞を用い、「宇宙放射線と微小重力の哺乳類細胞への影響(NeuroRad)というテーマで宇宙実験をおこなった。この細胞は宇宙放射線をあび、放射線抵抗性が高くなっている可能性が考えられ、放射線抵抗性獲得の有無、その機序を解明する。平成23年度では、まず、宇宙から戻ってきたSK-N-SH細胞(以下宇宙細胞)と地上コントール細胞の比較を行なった。細胞はセルバンカーにて凍結された状態で地上にもどり、その細胞を1ヶ月間増殖、凍結保存を行ない、再融解した細胞を用いた。継代数はp5であった。まず、顕微鏡下にて細胞の形態を観察したが、大きな差異は認められなかった。次に、レーザー共焦点顕微鏡にて、細胞発生活性酸素の量を調べた。我々の開発したHPF蛍光試薬を用いた(Setsukinai et al., JBC, 2003)。宇宙細胞では、コントロール細胞と比較して、まず、増殖速度の明らかな増大が見られ、細胞発生活性酸素量の明らかな増大が認められた。また、ミトコンドリアに局在し、スーパーオキシドを消去するMnSODの活性を調べたところ増大して認められた。次に、宇宙細胞にX-rayを10 Gy照射し、アポトーシスおよびオートファジーの検出を行った。アポトーシスの検出にはHoechst33342を用い、オートファジーの検出には検出抗体としてLC3抗体を使用した。その結果、宇宙細胞では、コントロール細胞と比較して、1)アポトーシスの明らかな増大は認められなかった。しかし、2)オートファジーの明らかな減少が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
宇宙細胞では、細胞増殖速度の増大、活性酸素発生の増大およびMnSODの増大が認められた。また照射後の細胞においては、アポトーシスには変化が認められず、オートファジーの減少が認められることが明らかとなった。これらの結果からMnSOD 活性とオートファジーとの関連性が浮かび上がってきたため、当初、Suvivin遺伝子およびその発現を抑えるsiRNAを作成しトランスフェクトする予定であったが、MnSOD遺伝子およびその発現を抑えるsiRNAを作成しトランスフェクトしてオートファジーとの関連性を調べる方向で研究を進めることにする。
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今後の研究の推進方策 |
宇宙では、ガンマ線、陽子線、重粒子線および中性子線の混合放射線場であり、およそ地球上の100倍の放射線被爆となる。本研究では平成23年度の結果から、宇宙細胞では、明らかな細胞増殖速度の増大、活性酸素発生の増大および、ミトコンドリア局在MnSODの増大が認められた。次に、照射後の細胞において、アポトーシスには変化が認められず、オートファジーの減少が認められることが明らかとなった。これらの結果からMnSOD 活性とオートファジーとの関連性が浮かび上がってきた。従って、平成24年度では、次のことを行なう。コントロール細胞と宇宙細胞を用い、1)オートファジー関連遺伝子発現(beclin 1, Bcl-2)およびSurvivin量の発現についてウエスタンブロット法にて調べる。2)MnSOD遺伝子およびその発現を抑えるsiRNAを作成しトランスフェクトして、MnSOD発現量についてRT-PCRおよびNative gel activity assayにて確認する。3)2)で確立した細胞を用い、ミトコンドリア由来活性酸素の量はHPF蛍光試薬にて半定量的評価を行い、放射線照射後のオートファジーについては免疫染色とウエスタンブロット法にて半定量的評価を行う。4)2)で確立した細胞を用い,オートファジー関連遺伝子発現(beclin 1, Bcl-2)およびSurvivin量の発現について、RT-PCRおよびウエスタンブロット法にて検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
Suvivin遺伝子およびその発現を抑えるsiRNAを作成しトランスフェクトする予定であったができなかったため、その分の未使用額は次年度にまわし、今年度計画しているMnSOD遺伝子およびその発現を抑えるsiRNAを作成のためのトランスフェクト用の試薬、消耗品の購入にあてる予定である。その他、細胞培養を行うための培地および血清、培養のための器具等の消耗品、オートファジー検出用抗体ほかウエスタンブロット用抗体類、分子生物学的実 験用消耗品一式は本研究を行うのに必須である。また国内外での研究成果発表を行うのに旅費が必要である。
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