研究課題/領域番号 |
23592779
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
松本 裕子 日本大学, 歯学部, 講師 (50221594)
|
研究分担者 |
秋元 芳明 日本大学, 歯学部, 教授 (10147720)
小野 眞紀子 (池田 眞紀子) 日本大学, 歯学部, 助手 (00267113)
竹内 麗理 日本大学, 歯学部, その他 (60419778)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 歯肉肥厚 / Ets遺伝子 / 転写因子 / IL-1α |
研究概要 |
これまでに薬物性歯肉肥厚の発症機序の解明を目的として、歯肉由来線維芽細胞と口腔粘膜由来上皮細胞を用いて、その細胞特性や増殖因子および炎症性因子に対する細胞応答、さらには細胞周期や細胞周期制御因子について検討してきた。本研究では口腔内組織由来細胞においてEts遺伝子がどのように炎症や細胞増殖に関与しているかについて検討すると共に、薬物性歯肉肥厚の発症機序との関係を探った。 口腔粘膜由来上皮細胞において、Epithelium-specific ets transcription factor、family member-3 (ESE-3) はphorbol 12-myristate 13-acetate (PMA)、interleukin-1α(IL-1α)、interleukin-1β(IL-1β)によりprotein kinase C (PKC)が活性化され、MEK1/2 pathwayを介することによって誘導された。一方、歯肉由来線維芽細胞において、IL-1αはp-38 MAPK、HSP27のリン酸化を促進すると共に、basic fibroblast growth factor(bFGF)合成の亢進を介して細胞増殖、DNA合成を促進した。したがって、炎症性因子によって刺激された上皮細胞はESE-3を介してIL-1αの活性亢進に関与し、放出されたIL-1αはさらに上皮細胞を刺激すると共に、線維芽細胞に作用して細胞増殖を促進する可能性が示唆された。さらに、線維芽細胞においてはニフェジピン単独よりIL-1αが存在することによって細胞増殖、DNA合成が亢進されることから、炎症性因子の関与が歯肉増殖を促進させる可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は東日本大震災の影響もあり、当初の計画に比較して、実働の研究期間の短縮を余儀なくされてしまった。したがって、口腔粘膜由来上皮細胞や歯肉由来線維芽細胞におけるEts遺伝子とIL-1αの関係、IL-1αによるMAPKのリン酸化、それらが両細胞に及ぼす影響、および両細胞間インターラクションについての新しい知見が得られたものの、歯肉肥厚誘発性薬物とEts遺伝子の関連性については顕著な知見が得られず、公表には至らなかった。次年度は、本年度の結果を踏まえて、不足分を補える研究体制をすでに構築しており、計画通りに研究が遂行できるものと思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
薬物性歯肉肥厚の発症機序の解明について、さらに進歩的な知見を得るため、次年度は歯肉由来線維芽細胞と口腔粘膜由来上皮細胞に歯肉肥厚誘発性薬物を作用させ、Ets遺伝子の発現にどのように影響を及ぼすか検討する。すなわち、RNAi技術を用いて、Ets遺伝子のsiRNAを歯肉由来線維芽細胞と口腔粘膜由来上皮細胞に導入し、遺伝子ノックダウン細胞を作成した上で、歯肉肥厚誘発性薬物やサイトカインを作用させ、IL-1αやMMPの発現誘導、およびMAPKのリン酸化について検討する。さらに、歯肉由来線維芽細胞と口腔粘膜由来上皮細胞との間のインターラクションについて検討するため、共培養系を用いてEts遺伝子の関わりについて検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究を遂行するにあたり必要である研究施設および設備(細胞培養用機器(CO2インキュベーター、クリーンベンチ)、電気泳動装置およびレーンアナライザー、分光光度計、マイクロプレートリーダー、PCRシステムなど)は所属研究機関に整備されている。したがって、本研究を継続してさらに発展させていくために、実験材料(細胞培養関係試薬、RNAi技術関連試薬、PCR試薬、細胞外サイトカイン測定のためのElisa Kit、抗体などのWestern Blotting法関連試薬、プラスチック器具など)の調達を行う。各研究分担者に対しては担当実験に必要な実験材料に応じて研究経費を分配する。さらに、研究結果を国内外に発表するため学術雑誌への投稿費等に使用する。
|