研究課題/領域番号 |
23592779
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
松本 裕子 日本大学, 歯学部, 講師 (50221594)
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研究分担者 |
秋元 芳明 日本大学, 歯学部, 教授 (10147720)
小野 眞紀子(池田眞紀子) 日本大学, 歯学部, 助手 (00267113)
竹内 麗理 日本大学, 歯学部, その他 (60419778)
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キーワード | 薬物性歯肉肥厚 / ets遺伝子 / 炎症性因子 / フェニトイン / 細胞周期 |
研究概要 |
これまでに薬物性歯肉肥厚の発症機序の解明を目的として、歯肉由来線維芽細胞と口腔粘膜由来上皮細胞を用いて、その細胞特性や増殖因子および炎症性因子に対する細胞応答、さらには細胞周期や細胞周期制御因子について検討してきた。本研究では口腔内組織由来細胞においてEts遺伝子がどのように炎症や細胞増殖に関与しているかについて検討すると共に、薬物性歯肉肥厚の発症機序との関係を探った。 炎症性因子によって刺激された口腔内上皮細胞はEts遺伝子を介してIL-1αの活性亢進に関与し、放出されたIL-1αはさらに口腔内上皮細胞を刺激すると共に、歯肉線維芽細胞に作用して細胞増殖を促進する可能性が認められた。Ets遺伝子は炎症性因子にだけではなく、細胞周期制御因子にも直接作用することから、本年度は歯肉肥厚を誘発する薬物の細胞周期に対する影響について検討した。 フェニトインは細胞増殖能および細胞周期のG0/G1からS相への進行を亢進した。さらに、cyclin dependent kinase(cdk)-inhibitory proteinであるp21とp27を減少させ、S phase-promoting proteinであるphospho-Thr 160-Cdk2とphospho-Ser807/811-Rb(retinoblastoma protein)のレベルを増加した。歯肉線維芽細胞におけるG1 cell cycle arrestの抑制はフェニトインによるCdkとRbのリン酸化の増加とp21とp27の減少によることが認められた。Ets遺伝子のリン酸化はcyclinによって制御されていることから、薬物性歯肉肥厚にはEts遺伝子が深く関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は口腔内組織におけるEts遺伝子と炎症性因子の関係についての知見と共に、歯肉線維芽細胞においてEts遺伝子と関連がある細胞周期制御因子に対するフェニトインの影響について新しい知見が得られた。すなわち、フェニトインは歯肉線維芽細胞においてCdkとRbのリン酸化の増加とp21とp27の減少を介してG1 cell cycle arrestの抑制を引き起こすことによって歯肉肥厚を誘発する可能性が認められた。このような成果をあげ、研究結果を国際誌に公表できたため、本研究課題はおおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
薬物性歯肉肥厚の発症機序の解明について、さらに進歩的な知見を得るため、次年度は歯肉由来線維芽細胞と口腔粘膜由来上皮細胞に歯肉肥厚誘発性薬物を作用させ、Ets遺伝子の発現にどのように影響を及ぼすか検討する。また、細胞周期制御因子とEts遺伝子が薬物性歯肉肥厚の発現にどのように関与しているかを検討する。すなわち、RNAi技術を用いて、Ets遺伝子のsiRNAを歯肉由来線維芽細胞と口腔粘膜由来上皮細胞に導入し、遺伝子ノックダウン細胞を作成した上で、歯肉肥厚誘発性薬物やサイトカインを作用させ、IL-1αやMMPの発現誘導、およびMAPKのリン酸化について検討する。加えて、フローサイトメトリーを用いて細胞周期の変化について検討すると共に細胞周期制御因子の発現とリン酸化について検討する。さらに、歯肉由来線維芽細胞と口腔粘膜由来上皮細胞との間のインターラクションについて検討するため、共培養系を用いてEts遺伝子の関わりについて検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究を遂行するにあたり必要である研究施設および設備(細胞培養用機器(CO2インキュベーター、クリーンベンチ)、電気泳動装置およびレーンアナライザー、分光光度計、マイクロプレートリーダー、フローサイトメトリー、PCRシステムなど)は所属研究機関に整備されている。したがって、本研究を継続してさらに発展させていくために、実験材料(細胞培養関係試薬、RNAi技術関連試薬、PCR試薬、フローサイトメトリー用試薬、細胞外サイトカイン測定のためのElisa Kit、抗体などのWestern Blotting法関連試薬、プラスチック器具など)の調達を行う。研究分担者に対しては担当実験に必要な実験材料に応じて研究経費を分配する。さらに、研究結果を国内外に発表するため学術雑誌への投稿費等に使用する。
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