研究概要 |
(目的)化学的放射線防護剤であるamifostineは静脈内投与された場合,唾液腺,骨髄,皮膚などに高濃度に分布する。特に唾液腺に対するamifostineの放射線防護効果が数多く報告されているが、唾液腺の発生過程の唾液分泌に関与する各細胞の機能面から評価した報告は少ない。唾液腺の分枝形態形成期に及ぼす放射線の影響、および化学的防護剤amifostineの効果を組織化学的,機能的に追究した。(方法)(1)マウス胎仔期15.5日目の唾液腺原基を分離、器官培養し、30分間10mMのWR-1065 (amifostineの活性型;還元型)に浸漬しX線 (0, 1, 5 Gy)を照射した。培養3日後を観察した。(2)妊娠15.5日目(プラグ形成を0.5日とする)の親マウスにamifostine(リン酸型;プロドラッグ)をX線(0, 1, 5 Gy)を照射する30分前にamifostine(リン酸型;プロドラッグ)を0.1mg/g投与した。実験(1),(2)ともにAQP3, AQP5, E-cadherinの組織化学的染色、PCR法による遺伝子のcDNA量、各タンパクのウェスタンブロット解析を行った。(結果)(1)マウス胎仔の器官培養した顎下腺、胎生の顎下腺ともに、放射線照射により唾液腺原基が委縮し、分枝形態形成が遅延した。(2)放射線照射により各遺伝子の発現、各タンパクの発現が低下した。 (3) mifostineがこれらの影響を軽減する傾向があることがわかった。(4)器官培養した顎下腺と胎生の顎下腺の間での放射線の影響および防護剤の効果の違いは得られなかった。
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