研究課題/領域番号 |
23592792
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
兼平 正史 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (30177539)
|
研究分担者 |
石幡 浩志 東北大学, 大学病院, 助教 (40261523)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 知覚過敏 / 象牙質透過性 / 光化学 / ルミノール |
研究概要 |
知覚過敏処置後における症状の後戻りの原因ならびそのプロセスはいまだ解明されていない。その理由として症状に着目したin vivo解析および象牙質透過性を対象としたin vitroシミュレーションの困難さがあげられる。我々は、ルミノール化学反応を応用した象牙質透過性の定量的計測法を開発し、知覚過敏抑制材の効果を経時的に解析する手法を確立した。本研究では知覚過敏処置後における象牙質透過性計測の実施と、並行して象牙質に対する微細形態学的解析を行い、知覚過敏抑制効果が時間と共に変化するプロセスを解明しより実効性ある知覚過敏抑制法を確立する事を目的としている。我々の開発した装置は、ヒト象牙質の透過性を簡便にしかも透過量の瞬間的な変動を捉え高速サンプリングをしている。その構造は、片側のchamberに充填された発光トリガー液を加圧する事によりトリガー液が象牙質試験片内に浸透し、もう一方のchamberに充填された化学発光試薬ルミノールに達して化学発光を生じる。その強度を高感度フォトダイオードにて検知して、時系列的に計測しながらコンピューターで処理することで試料の透過性を計測している。平成23年度では、大震災によりこの装置にも被害がおよび正常に作動しなくなったため新たに作製直したが、その際にパイプ等の配置を変更し、センサーをより感度の高い物に交換した。この実験計測装置の基本性能について試験したところ、以前のものに比べ5倍の感度で発光を検知できる事がわかった。この検知精度の向上により、より微量の化学発光を捉える事が可能となり、より軽微な象牙質内溶液の透過を検知てきる事となり精細な解析が期待できるようになった。本年度では当初の予定どおり象牙細管内に結晶を生成させる方法と象牙質表面に皮膜を生成させる方法での実験を開始し、現在短期の例について解析を開始している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では、本研究で使用するルミノール化学発光を利用した象牙質ディスクの透過性測定装置を改良するとともに、使用する象牙質ディスクの基本的透過性、個々の試料のバラツキや実際に研究に使用するスミヤ層がある状態での試料の透過性を計測し、コントロールとなる値を測定した。また現在臨床的に広く用いられている象牙質透過性を抑制する3種類の方法のうち細管内に結晶を生成させる方法、象牙細管開口面を被膜状にレジン系材料で封鎖する方法のそれぞれについて、透過性抑制が失われ始める時期、すなわち後戻りが始まる時期を見いだすための計測を開始しており、ほぼ計画どおり考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成23年度に計画した象牙細管に結晶を生成させる方法での透過性抑制効果の補足が期待どおりに得られているか評価する。本研究では、これまでに報告されているヒトの歯髄内圧で歯髄側から加圧し、アルブミンを象牙細管内液として用いて生体と同様の環境をシミュレートしている。この条件で長期間での十分な変化が得られなかった場合には、象牙質内部、特に細管内の状態を詳細に観察し、場合によってはEPMA分析等で解析し、この種のシミュレーション研究モデルの条件や妥当性について検討するとともに、濃度や圧力調整等で変化検出の精度を向上させる。 変化を十分観察できた場合には、2)象牙細管内液の蛋白等を変性させ流動性を低下させる方法、3)象牙細管開口面を皮膜状にレジン系材料で封鎖する方法の透過性試験を、23年度と同様試料数を増やしながら遂行し、透過性抑制効果破壊の過程を詳細に分析する。近年、象牙細管表面をレジン系材料で被膜状に被覆して透過性を減少させる材料が広く臨床に使われ始めている。これらの材料では、歯質との接着機構が破壊されなくても材料そのもので透過性が増大していく事が報告されているため、特にこの材料では、塗布面付近のSEMおよびTEMによる観察を注意い深く行う。データ数に関しては、象牙細管構造は個体差が大きく影響してくる事が予想されるため、統計学的に精度の高い研究データが得られるように十分な試料を準備する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度では、本研究に使用するルミノール化学発光を利用した象牙質ディスクの透過性測定装置が大震災により正常に作動しなくなったため新たに作製直したが、その際に設計の変更を行い、センサーをより感度の高い物に交換した。そのため本実験計測装置の基本性能および使用する象牙質ディスクの基本的透過性や実際に実験に供する試料のコントロールとなる値について再計測を行う必要にせまられため、研究そのものの開始に多少の影響があり、デジカメシステムなどの一部の消耗品の購入にいたらなかった。 平成24年度以降にこれらの消耗品を購入するとともに、本研究の遂行に必要な薬品、材料、ガラス器具など器具、実験器材や記録装置等の消耗品を随時購入する予定である。計画的に使用することとする。他の消耗品は、試料作製するためのガラス器具や薬品、象牙質透過性試験装置による観察の際の消耗品、顕微鏡観察のための実験器材・消耗品により構成されている。国内旅費,外国旅費については国内の象牙質透過性を研究する研究者との技術情報の交換や専門有識者からの教説の取得・ミーティングおよび海外研究協力者との打ち合わせのため使用する。また、国内外において一部の成果については発表を行い、この研究の学術・社会的評価を広く得るものとする。
|