研究課題/領域番号 |
23592803
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
北村 知昭 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (50265005)
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研究分担者 |
西原 達次 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (80192251)
鷲尾 絢子 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (10582786)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 歯髄 / 骨 / 根尖歯周組織 / 再生医療 / 炎症制御 / 慢性炎症 |
研究概要 |
本研究は,抗炎症能あるいは組織誘導能が知られている薬剤,生体分子,多血小板血漿(Platelet Rich Plasma; PRP)が各種細胞に与える影響を検討し,断髄部,根尖病変部に薬剤・生体分子,PRPを組み合わせて応用・実用化することを目的としている. これまでに私達は,歯髄創傷治癒における歯髄アポトーシスと修復象牙質形成の相互作用,歯髄細胞回復能への各種刺激の影響等ついて明らかにしてきた.またFibroblast Growth Factor-2(FGF-2)徐放による象牙質欠損部への新生象牙質形成誘導や象牙芽細胞様細胞株の樹立等,歯髄再生に必須の研究成果を挙げてきた. 本年度は,私達が開発している新規セメントの象牙芽細胞様細胞,骨芽細胞様細胞への影響,ステロイドコアクチベーターMTI-IIの骨芽細胞様細胞への影響,PRP,Bone Morphogenetic Protein-2(BMP-2),FGF-2の象牙芽細胞様細胞への影響,アメロブラスチンの上皮細胞への影響について検討した. その結果,BMP-2は象牙芽細胞様細胞の分化に影響を与えること,FGF-2は象牙芽細胞様細胞の細胞突起伸長を誘導することを明らかにした(Kitamura et al., Polymers, 2011; Washio et al., Int J Dent, 2012; Jimi et al., Int J Dent, 2012).また,新しく開発したセメントは象牙芽細胞様細胞,骨芽細胞様細胞に親和性を有すること,MTI-IIは骨芽細胞様細胞の炎症応答を抑制すること,精製したPRPが象牙芽細胞様細胞の分化関連遺伝子の発現を誘導すること,さらにアメロブラスチンは上皮増殖を抑制することを明らかにした.今後はそれぞれの分化誘導因子,炎症抑制因子の誘導・抑制における機能解析を実施する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在実施しているのは,新規セメントの象牙芽細胞様細胞および骨芽細胞様細胞への影響,ステロイドコアクチベーターMTI-IIの骨芽細胞様細胞への影響,多血小板血漿(Platelet Rich Plasma; PRP),Fibroblast Growth Factor-2(FGF-2)の象牙芽細胞様細胞への影響,ならびにアメロブラスチンの上皮細胞への影響についての検討である. 新規セメントについては象牙芽細胞様細胞ならびに骨芽細胞様細胞への親和性を有していることが明らかになったこと,ステロイドコアクチベーターMTI-IIについては遺伝子発現レベルでの炎症抑制が示されたこと,FGF-2の象牙芽細胞様細胞への影響についてはFGF-2が象牙芽細胞様細胞の突起伸長を誘導すること,PRPは精製過程がほぼ安定したので,今後実施する予定であるPRPの高精製過程の確立の準備が整ったこと,さらにアメロブラスチンについては精製がある程度安定したことがある.現時点で論文公表に至る成果はないが,当初に予定していた進行度合はおおむね達成しているため,自己点検による評価としてはおおむね進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
次年度においては,平成23年度に本研究費で計上した備品を用い,次年度研究費より細胞培養等に必要な消耗品費を拠出して,さらに研究を進める. 具体的な次年度以降の研究の推進方策としては以下の通りである.私達が開発している新規セメントについては,象牙芽細胞様細胞および骨芽細胞様細胞への生体親和性・炎症応答等における機能解析を行う予定である.ステロイドコアクチベーターMTI-IIについては,骨芽細胞様細胞での炎症抑制過程における機能解析とMTI-IIタンパク質を精製し,MTI-II投与による影響を検討する予定である.Fibroblast Growth Factor-2(FGF-2)の象牙芽細胞様細胞の突起伸長誘導については,現在,FGF-2シグナル伝達経路上で機能するタンパク質の発現レベルで解析を行っている.また,多血小板血漿(Platelet Rich Plasma; PRP)については,精製過程がほぼ安定したのでPRPの高精製システムを確立し各種細胞への影響を検討していく.さらにアメロブラスチンについてはフローサイトメトリー等を用いた上皮細胞周期への影響,およびアポトーシス誘導への影響を検討する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度においては,平成23年度に本研究費で計上した備品を用い,次年度研究費より細胞培養等に必要な消耗品費を拠出する. 具体的な次年度研究費の使用計画としては以下の通りである.どの研究計画においても必要な培養用ディッシュ等購入に使用するとともに,新規セメントの象牙芽細胞様細胞,骨芽細胞様細胞への生体親和性・炎症応答等における機能解析については,炎症誘導因子TNF-αあるいはLPS等を購入する.ステロイドコアクチベーターMTI-IIの骨芽細胞様細胞での炎症抑制については炎症性メディエーター発現を解析するために必要な消耗品を購入する.また,MTI-IIタンパク質を精製に必要な関連消耗品を購入する.Fibroblast Growth Factor-2(FGF-2)の象牙芽細胞様細胞の突起伸長誘導については,FGF-2シグナル伝達経路上で機能するタンパク質発現の解析を行うため,ウエスタンブロッティング等に用いる消耗品を購入する.また,多血小板血漿(Platelet Rich Plasma; PRP)については,PRPの高精製システムに用いる消耗品を購入する.アメロブラスチンについてはフローサイトメトリーおよびアポトーシス検出に必要な消耗品を購入する予定である.
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