研究課題/領域番号 |
23592805
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研究機関 | 奥羽大学 |
研究代表者 |
木村 裕一 奥羽大学, 歯学部, 教授 (60211877)
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研究分担者 |
今井 啓全 奥羽大学, 歯学部, 講師 (10265209)
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キーワード | 光増感剤 / 根管治療 / ナノ粒子 / 細菌検査 / レーザー / 臨床診断 / 蛍光色素 / 歯内療法 |
研究概要 |
今年度は蛍光色素としてメチレンブルー(ピーク波長610nmと665nmの2波長)を用いて研究した。昨年度はローダミンBとインドシアニングリーンの2種類を用いたが、変更した理由として検知するレーザー(DIAGNOdent)との反応があまり良くなかったからである。メチレンブルーをナノ粒子化(粒子径250 nm)した生分解性ポリマーであるポリ乳酸(PLA)に付着させて実験に供したが、レーザーによる検知が弱くうまく検出されなかった。そこで生分解性ポリマーをPLAからポリ(ラクチド-co-グリコリド)共重合体(PLGA)に変更して、同じようにナノ粒子化(粒子径250 nm)したものにメチレンブルーを付着して使用したら、少しずつ良く検出できるようになった。濃度(0、0.01、0.1、1、10 mg/ml)の範囲では、PLAからPLGAにすることで1と10mg/mlの濃度では1.2倍ぐらい検出感度が増加したが、それ以下の濃度では変わらなかった。検出感度は濃度依存的に増加したが、低濃度である0.01と0.1mg/mlの濃度ではかなり低い値になった。さらに今年度は根管内を直接レーザーで測定するため新規にレーザー装置(DIAGNOdentPEN)を購入し、ペリオ用プローブを使用すると根管を#60まで拡大すると容易に根管内に挿入でき直接測定することが可能になった。しかし、レーザー光がプローブ先端からほとんど直進するため測定範囲が限られたものになってしまい、根管の側面をなかなかうまく測定できなかった。一方で、ナノ粒子化すると象牙細管に侵入しやすく、また細菌との付着も良くなるが、色素を添加するとなるとナノ粒子化したものは表面積が小さくなるため、それに伴い色素の付着量も少なくなるのでレーザーでの検出が難しくなることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究ではレーザーを用いて検出しているが、使用した蛍光色素の吸収波長とレーザーの波長との関係、また生分解性ポリマーには複数の種類があり、どの種類を用いるかによってかなりの差があることが判明した。生分解性ポリマーのナノ粒子化(粒子径250 nm)は象牙細管への侵入を容易し、細菌への付着も良くする反面、粒子が細かくなり、表面積が減少することにより予想以上に蛍光色素の付着量が減少し、レーザーでの検出が難しくなったことが影響した。これらのことは事前に予測していなかったことであり、いわば想定外のことにより進捗状況がやや遅れてしまった。また、ナノ粒子化した生分解性ポリマーに蛍光色素を付着したものは、象牙細管に侵入したりすることにより予想外に非特異的に根管壁に付着することへの解決策が十分にとれていないことが研究の遅れの一因になった。
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今後の研究の推進方策 |
DIAGNOdentPENを用いてペリオ用プローブを使用すると一定以上(60号)の根管拡大を行うことにより根管内へのプローブの挿入が可能となり直接測定できることが判明したが、レーザー光のほとんどが直進し側方へ照射されないために根管壁の側面が十分に測定されないことがわかったことから、モリタで開発されたレーザーチップのように大部分(80%)が側方に照射できるようなプローブの開発ができるかどうかを検討する。もし開発が難しいようならば、まずは直接、根管内に挿入して測定した値と、試料であるヒト抜去歯を縦断して側方から測定できるようにして測定した値との相違を調べる。また、生分解性ポリマーをナノ粒子化(粒子径250 nm)すると蛍光色素の付着量が減少することから、少量でもレーザーで検出できるような蛍光色素の選択と、生分解性ポリマーの種類によって付着する蛍光色素の量にかなりの相違があったことから、まだ使用していない他の種類であるポリグリコール酸(PGA)とポリジオキサノン(PDS)の生分解性ポリマーの使用を試みて、レーザーによる検出感度を増加させる方策を考える。また、粒子径と検出感度との関係を調べるため、ナノ粒子より少し大きい粒子のものを準備して検出感度との関連性を調べる。次に検出感度を上げる方策として、ナノ粒子化したものを化学修飾する方法を考える。例えば、よく用いられている方法としてキトサンによる化学修飾があるので、まずはキトサンをナノ粒子に修飾して試みてみる。 また、今年度、新たに使用した蛍光色素と生分解性ポリマーであるPLGAとの組合せによる細胞毒性試験に関してはまだ、調べていないので、細胞毒性試験を行い安全性を確認する予定である。 これらの研究内容に関して、分野内または学内で協力してもらえる人に依頼して研究をさらに押し進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
レーザーによる測定で検出感度を上げるためまず、生分解性ポリマーでまだ使用していない他の種類であるポリグリコール酸(PGA)とポリジオキサノン(PDS)を用いてナノ粒子化(粒子径250 nm)したもので検出感度を調べ、ポリ乳酸(PLA)とポリ(ラクチド-CO-グリコリド)共重合体(PLGA)の結果と比較検討する。次に検出感度を上げる方策として、ナノ粒子を化学修飾する方法を考える。例えば、よく用いられている方法としてキトサンによる化学修飾があるので、キトサンをナノ粒子に修飾して試みてみる。検出感度に変化があるようならば、さらに他の化学修飾をすることで感度を上げる方法がないかを探る。それと平行して、現在使用しているナノ粒子の細菌への付着度も調べる。感染根管内で良く検出されている細菌で例えばEnterococcus faecalisなどの細菌を使用する予定である。昨年度は、蛍光色素としてローダミンBとインドシアニングリーンの2種類で生分解性ポリマーとしてPLA(粒子径250 nm)を用いて細胞毒性試験を行ったが、本年度使用したメチレンブルーとPLAまたはPLGA(粒子径250 nm)の組合せを用いても細胞毒性試験を行う。もし、キトサンなどを用いて化学修飾することにより、検出感度が上昇したならば、感度が良い化学修飾した材料に関しても細胞毒性試験を行い、安全性を確認する。 次年度中には、研究成果をまとめて研究発表を行う予定である。
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