研究課題/領域番号 |
23592808
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
安藤 進 日本大学, 歯学部, 准教授 (40120365)
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研究分担者 |
高見澤 俊樹 日本大学, 歯学部, 助教 (60373007)
吉田 武史 日本大学, 歯学部, 専修医 (20434079)
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キーワード | Tooth wear / 酸蝕 / 咬耗 / 摩耗量 / 衝突摩耗試験 / 表面性状 |
研究概要 |
エナメル質に対する咬耗と酸蝕の相互作用によるTooth wearの影響を明らかにし,包括な予防法を提示することを目的として検討している。24年度では種々の酸蝕関連物質および齲蝕予防効果のあるとされるマウスリンスや酸蝕防止効果のあるとされるナノコート材に浸漬したエナメル質に咬合運動をシミュレートした衝突摩耗力を負荷し,wear loss量の継時的変化および表面性状の観察からwear挙動をトライボロジー学的に検討した。その結果,wear loss量および表面性状は,浸漬物質によって異なる結果であった。すなわちwear loss量は,衝突摩耗時に同時作用した浸漬物質の酸蝕力および酸蝕阻止力に大きく影響を受け,使用したマウスリンスやナノコート材には衝突摩耗性のtooth wearの進行を遅らせる効果が示された。しかしこの初期wear阻止効果のある製品でも長時間の衝突摩耗力の作用に対してはwear loss量が大きくなり継時的には効果が低下することが判明した。臨床においてtooth wearを予防するには,初期の酸蝕を防止することでtooth wearを予防する可能性のあることが示され摩耗挙動からは,酸蝕の影響がない場合にはマイクロクラック発生から疲労性摩耗を示す挙動が認められ,酸蝕の影響がある場合には摩擦化学的摩耗を示す挙動の違いが認められ,摩耗タイプの違いがwear loss量に影響するとことが示唆された。 これらの成果から咬合性のtooth wearは,浸漬物質の酸蝕性と強く関連し,酸蝕を防止あるいは予防する効果があるマウスリンスおよびナノコート材は有効であり咀嚼する前に作用することで,wear loss量を減少し表面性状への影響を防止することからtooth wearを予防する専用材料の開発につながることが示唆された。 得られた研究成果については,関連する学会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度の実施状況は,エナメル質に対する咬耗と酸蝕の相互作用によるTooth wearの影響を明らかにすると共に包括的な予防法を提示することを目的として,咬耗応力を軸に酸蝕因子および酸蝕予防因子を組合せたin vitro実験を展開した。その結果,トライボロジー学的な初期摩耗挙動については,介在した溶液の酸蝕力によってその摩耗パーターンが異なることを明らかにした。すなわち,酸蝕の影響がある摩耗挙動は摩擦化学的摩耗を示すタイプが認められ,酸蝕の影響がない摩耗挙動は疲労性摩耗が認められ,両者間にはwear loss量に大きな違いが認められた.このことから初期段階での酸蝕防止が重要であり,酸蝕因子の低減について留意する事項について示唆することが出来た。 超音波パルス測定を用い内部性状の観察については,期待したような成果が得られず光干渉断層画法に観察方法を変えて検討を行った。 得られた研究成果については,関連する学会で公表した。
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今後の研究の推進方策 |
咬耗と酸蝕の相互作用によるtooth wearに対する包括的な予防法を提示するための研究の推進方策については,大きく変更することなくこれまでの方法によって実施する予定である。 初期の摩耗挙動結果から,酸蝕の影響がある場合には摩擦化学的摩耗を示し,酸蝕の影響がない場合には疲労性摩耗と違いが認められ,両者間のwear loss量には大きな違いが認められた。この初期段階での酸蝕予防がtooth wearのコントロールには重要であることから,酸蝕因子の低減につながる方法や予防材料の検討を行う。進行性したtooth wearは,自己修復性でないこと,また長時間の衝突摩耗力に対しては酸蝕防止材の効果が不十分であった結果を踏まえて,積極的にコーテイング材などで予防修復を行いその後の進行を阻止するための研究を行う予定である。これらの成果を加えて咬合性のtooth wearの予防処置に対する総括的な提言をまとめる計画である。 得られた研究成果を取りまとめ,関連する学会で発表し社会に情報を発信する計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度の研究経費のうち直接経費として計上する金額については,24年度と同様に物品費,学会への旅費および学術誌への投稿費用などで使用する予定である。
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